oid_logo

icon_mailmagazine
HOME » INTERVIEW » Okada Takuro オフィシャルインタビュー

icon Okada Takuro オフィシャルインタビュー

Okada Takuro オフィシャルインタビュー

今回もエンジニアとして葛西敏彦さんが参加されていますが、具体的にはどんな作業を一緒に行ったのでしょうか?

岡田葛西さんにはドラム録音とミックスのお手伝いをやってもらいました。ドラムについては、葛西さん側も機材や環境的にかなり進化しているから積極的に新しい模索もしてくれて。これまでの制作経験も含めた密なコミュニケーションの関係が前提ではありますが、多くを話さなくても、自然と一個一個の楽器の音色をどうしようかということをすごく気にしながらマイキングしてくれて。スネアとか、普通の音に聞こえると思うんですけど、5本位マイクを立てたし、キックも3本以上立っているんです。プロツールス上でのエディットの可能性は残しながらも、録りの時点で奥行き感を意識してレイヤーをよりわけていくイメージです。

なるほど。

写真

岡田ドラムの音って良くも悪くも時代感を反映させやすいので、とても注意して録音しました。増村くんにも録音の時点からプレイのタッチ自体もミキシングされた音を想定して叩いてもらいました。去年、ドラマーの神谷純平さんと一緒に録音する事が多かったんですが、マイク乗りの良い楽器の鳴らし方をするなーとずっと感心していて。大先輩ですが……(笑)。音楽のスタイルによりけりな所はもちろんあると思うんですが、神谷さんって、録音の時は生で聴くとかなり小さな音で叩くんです。そうすることによってマイクに負荷のない膨よかな音を集音できるんですよね。そういった話を増村にしつこく話したんので、プレイはもちろんチューニングや楽器選びに渡ってしっかり準備してきてくれました。

それ以外は岡田さん自身で録音した?

岡田そうです。Altec1592AとDrawmer1960という旧石器時代的なアウトボードを持ち運んで(笑)、自分で音を作りながら録音していきました。ギター・アンプは、Fender PrincetonとSilvertone1484を使い分けたり、時に同時に鳴らして録音しました。Princetonの音を軸に1484の歪みっぽい音を混ぜ合わせることで、コンプを掛けずにマイルドなフィールが出せたように感じています。逆に「Stay」と「New Morning」のギター・ソロは、Drawmer1960にギターを直結してプリアンプのオーバーロードで歪ませました。それを基本に、設定の違うアンプに何度かリアンプした音を混ぜて若干の空気感を作ろうと試みました。自宅で録ったライン録りのデモのテイクが良くて、なかなかそれを越えるテイクがアンプを使った本録音の際に出てこなかったので、それを生かすためにいろいろ模索していくなかで偶然行き着いた音色ですが、ユニークな結果が得られたので、今後このアイデアを発展させる事も出来そうだなと思っています。
ウーリッツァーも、すべてPrincetonから出しましたね。手間も時間もめちゃくちゃ掛かるけど、誰が演奏してもプリセットで同じ音が出るような楽器には興味が持てなくて。そんな気持ちもあって今回はシンセを一切使わず、再現性の低い指先の感覚で操られた楽器を丁寧に録音して、余計なエフェクトは極力控えてミキシングをしました。

そういった録音方法が背景にあるからなのか、各人の演奏自体にもある種の緊張感が強く漂っているように思いました。

岡田MIDIで誰でも音楽を作れるっていうことは素晴らしいと思うけど、僕はアナログな古い人間だからやっぱり違和感というか感動しきれない部分があって……。生演奏ならではの緊張感はかなり詰め込まれていると思います。

岡田さん自身のギター・プレイも派手ではないけど、緊張感と切れ味がすごい。

岡田だれが言い出したか知らないですけど、「ギターは時代遅れ」みたいなムードありますよね。そうするとかえってメラメラする性分なので(笑)、ギターをギターらしく鳴らすことには注力しました。

単純に、更に演奏が上手くなっているな〜というシンプルな驚きもあったり。

岡田たしかに僕含め、ドラムの人もピアノの人もバンドを一緒にやっていた頃よりは随分上手くなりましたよね……(笑)。これまでは、スタジオでまあまあなテイクが録れたら「後で家で編集します!」という椀子そばみたいなスタイルでサクサク録音したんですが(笑)、そうするといつも事後処理が大変で、何度も手が止まってしまうことがあって。今回は曲を作る段階でアレンジは組んでしまっていたので、迷わず演奏してもらえたように思います。それこそ、関わる人間が少ないので、気を遣わずにゆっくり時間をかけて録音できたのも大きいと思います。

いわゆる「一発取り」的な単純な緊張感とも違って、もっと精密に全体が統御されている印象もあります。

岡田実際、演奏はバラで録っているので、一緒には演奏していないです。ドラムや鍵盤をエディットしている部分もあるけど、あくまで音のレイヤーと奥行きの中で一緒に演奏したかのような緊張感を狙いました。
このところ注目されがちな音楽って、すべての楽器がMIDI的に打点がちゃんとグリットしていたり、グリッド線を基準にした揺らぎがループ的に反復するものが多いと思うんですけど、生楽器における緊張感って、打点が端正に並んでいかない揺らぎが残っているものにこそ感じたりしますよね。なので、DTMのモニター上での視覚的な揺らぎではない、もっと感覚的なところを第一に気にしながらエディットしました。ループは使わず、都度都度のプレイのタッチがリアルに感じられるようにするというのも気を遣った部分です。

banner_s
『Taxi Driver』Music Video / Gotch