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The Vines 「Future Primitive」

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青野圭祐─2011.8.23─

海外勢では北米からのアーティストを今まで紹介させていただいてきましたが、今回、レコメンドさせていただきたいのは、豪州からThe Vinesの5枚目のアルバム『Furture Primitive』。

00年代の始め頃から「ビートルズ・ミーツ・ニルヴァーナ」なんて言葉も用いられて、The StrokesやThe LibertinesやThe Hivesなどとともにガレージ・ロック・リヴァイヴァルの筆頭格のバンドの一つと捉えられてきました。

先の形容通りThe Beatles的な甘美でノスタルジックなメロディーとNirvanaのがむしゃらな衝動が一緒くたになって鳴らされる音世界が魅力です。激しい曲では「ビートルズ・ミーツ・ニルヴァーナ」より「キンクス・ミーツ・ニルヴァーナ」でもアリじゃないかなと思える瞬間もありますし、The La'sのようなインディーっぽいジャングリーな感じもありますし、サイケデリックな微睡みを見させてくれる時もあります。

実はこのVines、デヴュー当初は英米のメディアからももてはやされていたのですが、2枚目のアルバム『Winning Days』からいささか評価に翳りが見られ(ここ日本や本国の豪州ではこのセカンドも高い評価を受けていました)、その後、フロントマンのCraig Nichollsの持病が発覚してからは、どうしても、その注目のされ方が最盛期に比べ、落ちていました。

とはいっても、もちろん、これはレコメンドなので、新しいアルバムについてお薦めさせていただきたいのです。と言うことで、新作のリード・トラック「Gimme Love」のMVをご覧ください。



「どこか郊外のガレージ」という注釈とともにカップルが現れ、ガールフレンドがつまづいた先にあるPCからVinesのメンバーが演奏し出す…という構成なのですが、何と言っても、このコンパクトで衝動的な曲。少し焦点の定まっていない感じのボーカル・ギターのCraigですが、たった2分程度の短い演奏時間に「愛をくれ!」という叫びを乗せる様が、(少なくともそれまでは容易にそんなことは口にしそうもなかった)彼のキャラクターとも相まってクールです。

続いて、デヴュー当時に特に注目された曲の一つ「Highly Evolved」を。



こちらは1分半程度の曲で、「Gimme Love」と比べれば大きな起伏はないですが、それでも、その短い時間の中にも奥行きがあり、じりじりと焦燥が伝わっきます。

 そして、前作『Melodia』からのシングル「Get Out」のMVです。



相変わらず曲自体は2分弱ですが、どんどん高揚していくビートとこの00年代のロックヒーロー的な佇まいがカッコ良いですよね。


彼らの持ち味は、叙情的でメロディー豊かなセカンド・アルバム『Winning Days』で特に発揮されていると思います。

名曲2曲を聴いてみてください。

「Ride」



「Winning Days」


どちらの曲も衝動任せではない、繊細な感覚が光っています。特に後者の「Winning Days」は、感傷的なアコースティックと「勝利の日々は過ぎ去った…」との歌いだしに、とても訴えかけるものがあると思います。

冒頭で、Vinesは評価は翳りがみられていると書きましたが、むしろ、この変わらない曲のクオリティをみると、時代の寵児だった時も、メインストリートをずしずし歩かなくなってからも、素晴らしい曲を幾つも生み出していることが分かると思います。それも、色んなものに手を出してはみたけれど、結果的にどれもそれなりの佳曲止まりという感じではなく、あくまで3分間の衝動に満ちたポップ・ソング。どれだけ自分たちへの批評の目が変わっていようが、彼らのみせてくれる3分間は変わらなく真摯で澱みないものです。

新作『Future Primitive』でも、それは変わりません。基本的にどの曲も3分前後で、焦燥感のあるものからメランコリックなもの、感傷的なものなどさまざまな曲がありますが、結局、どの曲もVinesとしてのクオリティは一級品ですし、不器用ながら変わらない良さというものを感じていただけると思いますよ。



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青野圭祐

Web
https://twitter.com/ath_sj3

BIO
雑誌やウェブなど各メディアで音楽の書き物をしたり、Bathroom Sketchesというインディ・ロックバンドでギター/ヴォーカル/シンセサイザーをしたり、Moles Regimeというデジタルユニットで活動したりしている、京都の郊外出身の25歳です。
US北西部(ワシントン州シアトル)と愛媛県が好きです。
アイコンはイラストレーターの岩沢由子さんに描いていただいております。