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Turntable Films オフィシャルインタビュー(後編)
(2020.11.11)

Gotch Bandのバンマスとして見える日本の邦楽シーン全体っていうのは、どういう風に映るんですか?

井上「嫌な質問やな(笑)。」

今現在のアジカンであれば、南米を中心とした別の居場所も国外にあるわけですよね。パンデミックがなければ、南米は彼らのもう一つの拠点であったくらいだと思うんだけど。それと違って、Gotch Bandの居場所は邦楽シーンの中でどう映るか?って話でもあるんですけど。

井上「それはゴッチさんともよく話すんですよ。「畑がないから耕すしかない」って。でも、僕にとってはそれは意外で。僕からするとASIAN KUNG-FU GENERATIONはデカいから、ゴッチさんは自分の家とか庭はあるけど、Gotch Bandでは別荘の庭も耕そうとしてくれている感じだったんですよね(笑)。それが耕せたら、ROTH BART BARONとか含め、もうちょっとインディのいい感じの音楽も知ってもらえるかなと思ってやっていますけど。テレビに出てる芸人だけがおもろいんじゃなくて、劇場にもおもろい奴おるよ、みたいな。だから、タンテで一回〈ROCK IN JAPAN〉に出たときも、「タンテのことを全然知らない人もいると思うから、畑を耕すつもりで頑張って」ってゴッチさんに言われたんですよ。でも、ライヴが終わってから、「行ってみたら、そもそも土がありませんでした」って返したくらい、すごい反応で(笑)。だから、居場所のなさっていうのはわりと一緒ですね。「これから耕さなきゃな、でもどうやったらいいの?」っていう。Gotch Bandは僕の音楽ではないですし、違うところは多々あると思うんですけど。でも、それがきっかけで知ってくださる方はたくさんいるから、それはそれでいい機会だと思って。取りあえず場所は探さんと、ってイメージかな。」

大きな区分けで言うと、Gotch Bandと今名前が出たROTH BART BARONとTurntable Filmsは、現状だとまだ近いフォルダにいる実感はありますか?

井上「音楽は違いますけどね。音楽的というより、人の繋がりがあるというイメージですね。それは、〈oid〉の面子、岡田(拓郎)くんとかも含めてですけど。音楽的にはバラバラだけど、緩い横の繋がりがあるっていう感じです。」

じゃあ、無理くり考えてほしい質問です。今回のアルバムを真ん中に置いたとき、その両側に置くとしっくりくるアルバム。それぞれのポイントと一緒に教えてください。

井上「これ、きっついなあ(笑)。」

「そもそもアルバムを置くのか、っていうところもありますよね(笑)。」

ストリーミング時代だからね。でも、そうなると、100曲のプレイリストにっていうことになるから、あと99アーティスト挙げてくださいっていうことになってしまう(笑)。

井上「それは面倒くさいわ(笑)。このアルバムのリファレンスになった作品のプレイリストを作っているときも、訳わからないものを作っているなって感じだったけど。」

事前にこのアルバムのリファレンスになった作品のプレイリストを井上君には作ってもらったんだけど、この中で聴いたことがあるのは、マイルス・デイヴィスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』とLCDサウンドシステム、アークティック・モンキーズとアンディ・シャウフだけでした(笑)。

井上「この質問は絶対訊かれると思っていたけど、全然出てけえへん(笑)。」

つまり、誰も作っていないものを作ったっていうことだから、いいことだと思うけど。

井上「そうなんですよ、だから困るんですよ。居場所がないんですよね。」

まだ“Disegno”、“A Day of Vacation”、“Stein & Burg”辺りの方向性のみで出来が立っているアルバムだったら、もう少し明確だとは思うんだけど、9曲でサウンド的にはかなり振れ幅があるからね。

井上「思いつくのはあるけど、この答えだと面白くないねんな。うーん、難しいな。」

「やっぱりずっと居場所がないってことだったら、横における作品もないってことですよね(笑)。自分がTurntable Filmsを知らないリスナーだとしたら、どの文脈で出会うねん、って話じゃないですか。それで言うと、音楽性が全く違うところからは出会えない気がするんですよ。特にこのアルバムってハイコンテクストだから。でも、置くとしたらマーキュリー・レヴとかかな?」

アルバムだったら、『オール・イズ・ドリーム』とか?

「それか、『デザーターズ・ソングス』かなとは思うんですよね。『オール・イズ・ドリーム』の方がアンセム感があるんで、それよりもうちょっと明るくない感じで『デザーターズ・ソングス』かな。」

井上「ほんまに?(笑)。めっちゃ面白くない話なんですけど、僕のイメージは〈ノンサッチ〉なんですよ。でも、ここの民族音楽のオムニバスじゃあまりに面白くないから、〈ノンサッチ〉のアーティストで、憧れも含めて言うならデイヴィッド・バーン。2004年の『グロウン・バックワーズ』ですね。トーキング・ヘッズじゃなくて。あの混ざり方は憧れもあるし、「何これ?」っていう訳がわからんのも、もちろんあるし。」

「デイヴィッド・バーンはなんとなくわかるかな。」

井上「もう一枚はアラバマ・シェイクスの『サウンド&カラー』がいいんじゃないですかね?」

うん、ばっちりだと思いますね。じゃあ、両側に置くアルバムを日本の作品に限定したら?っていう質問はどうですか。

井上「日本の作品に限定って、結構大変やで。知らんもん。デイヴィッド・バーンみたいなの、日本にいるの?」

いないよね。じゃあ、細野さんを一枚置いておくと、ハマりがいいんじゃないですか。っていう投げやりなアシスト(笑)

井上「みんな、こんなに時間かかるの?」

「細野晴臣さんの『S-F-X』は?」

ああ、なるほど。ビートの種類はまったく違うけど、ビートが基調になっている作品という部分ではいいんじゃないですかね?

井上「僕は何にしようかな? マジでないですよ(笑)。」

俺も言うといて、結構無理な質問しているなと思った(笑)。この「ないよ!」って感じが、このアルバムなんですけどね。

井上「じゃあ、加藤和彦で。僕が知ってるのは“イムジン河”くらい。嘘、嘘(笑)。」

「(笑)めちゃくちゃ京都感出るな。」

『パパ・ヘミングウェイ』か、『あの頃、マリー・ローランサン』か。それか、初期に行くかですよね。

井上「サディスティック・ミカ・バンド行ったら、おかしいかな。」

生やし、ロック・グルーヴですけど、グルーヴ重視の曲だし、って考えるとハマりはいいかも。

「全然知らんわ。」

井上「俺も知らんよ。じゃあ、『あの頃、マリー・ローランサン』にしましょう。」

写真

ほんまに? ちゃんと聴いてるよね?

井上「聴いてない(笑)。逆にザ・フォーク・クルセダーズの方が知っていますよ。サディスティック・ミカ・バンドまでしか知らん。だから、これは僕がちょうど60歳くらいになるおっちゃんに教えてもらった答えやな(笑)。ちゃんと自分が聴いたやつなら、そうやけどね。」

俺はザ・フォーク・クルセダーズは『紀元貮阡年』しか聴いたことないです。

井上「そんなん覚えてない、昔過ぎて。うん、そうしよう。」

じゃあ、ザ・フォーク・クルセダーズの1st(笑)。

井上「そうです。「こいつ、どんなやつやねん」って(笑)。投げ方がすごい(笑)。」

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『Taxi Driver』Music Video / Gotch