oid_logo

icon_mailmagazine
HOME » INTERVIEW » 8otto アルバム『Dawn On』オフィシャルインタビュー

icon 8otto アルバム『Dawn On』オフィシャルインタビュー

8otto アルバム『Dawn On』オフィシャルインタビュー

「生と死」を意識することで生まれた、更なる深み

でも完成したものを聞けば、変わらない8ottoの一貫した個性はしっかり感じ取れましたね。

TORA「ありがとうございます!」

マエノソノ「自分たちの個性って自分ではなかなかわからないですけど、らしさは出せたかなと」

その中でも“It’s All Right”はホーンも入って珍しくスカ・アレンジの曲ですね。

TORA「僕がやってみたかったんです(笑)。前のアルバムが出てすぐ考えついたんです。次のアルバムでやればみんなびっくりするし、絶対面白がってくれると思ったんですけど、その時はまさか6年も間があくとは思ってなかったから(笑)。でもどうせならやりたいことはやりたいし、絶対形にしたかった。『8ottoがこのタイミングでスカ?』とか思われてもどうでもいい、とにかくオレはやりたいことをやる! という気持ちの方が強かったですね」

写真

歌詞はいかがですか

マエノソノ「今までよりちゃんと日本語として聞こえるように歌いたかったので、歌詞は早めに、レコーディングの一ヶ月前ぐらいには仕上げてゴッチに送って、歌の練習をして臨んだという感じですね」

歌詞のテーマは何か設定しましたか。

マエノソノ「“Ganges-Fox”と“Mr. David”が『生と死』みたいなテーマで作った曲なんですけど、それがメインのイメージになりましたね。

「Ganges」ってガンジス川ですね。

マエノソノ「適当にイメージを当てはめてみたんです。インドの哲学とか数学とか宇宙の話とか好きですけど、なんとなく自分が死んだ時に葬式でかけてほしい曲だなと思って、最後の方は歌詞を考えてました」

TORA「自分の葬式でかけてもらいたい曲が1曲目にくるアルバムってヤバいな!」

マエノソノ「はははは!」

なんでそんなこと考えるようになったんですか。

マエノソノ「なんででしょうね? 今までは『ロックとは何か』みたいなことを考えたり歌ってたりしてたんですけど、ロックっていうより人間やな、人生やなって思うようになった。突き詰めていうと『愛』やなって思うようになって、そういう『生と死』みたいなことを考えるようになったんです。奇をてらう必要はないなと思い始めたというか。もちろん音楽を楽しんでもらうために、一緒に楽しめる言葉は必要だと思って探したんですけど、それ以外は嘘をつく必要はないなと思って」

死を意識し始めたのはどうして?

マエノソノ「それは、子供が出来た時に、こうやって人間って死んでいくんやなと考えるじゃないですか」

ん?(笑)

TORA「子供ができた時に?」

マエノソノ「こうやって生まれた、こうやって死ぬんだな、と」

TORA「生を感じたから逆に、ってことね」

マエノソノ「自分の親とかじいちゃんばあちゃんとか亡くなった人のことをいろいろ考えるようになって、前より『死ぬ』ってことがネガティヴじゃなくてむしろポップな感じがしてるんです。言うたらクルマ乗り換えるぐらいのイメージ。肉体っていう乗り物を換えるみたいな。だから、余計楽しく生きたいなと。生きてても死んでても、波長として心地よい音楽でありたいなというか。音楽って答えがないじゃないですか。この理論でこういう旋律だからかっこいいとか、そういう理屈じゃ作れないものじゃないですか。だいたいのものって、今や機械で全部作れると思うんですよ。タイミングとかパターンとかコンピューターに打ち込めば。でも『リアム・ギャラガー』ってパターンでヴォーカルを入れても、絶対に本物のリアムの方がかっこいいし。それって絶対コンピューターじゃ再現できないものだと思うんですよ。それを普通に意識するようになったってことですかね」

ふむ。死を意識するってことは、自分にとって大切なものは何か意識することでもあると思うんです。

マエノソノ「スティーヴ・ジョブスが言ってたような『今日が最後だと思って生きる』ってあるじゃないですか。後悔ないように選んで生きていく。そういうことは考えるようになりました。今日死ぬとわかったら何したいかなと迷った時、家族に電話しようとか、メンバーに言い忘れたことを言っていこうとか。そういうことを考えるようになりましたね」

今回のアルバムが自分の最後のアルバムだと思って作る、みたいな。

マエノソノ「アーティストの人ってみんなそうだと思うんですけどね」

悔いなく自分を全部出し尽くす。

写真

マエノソノ「うん、そうですね」

TORA「その時その時の、って感じで」

マエノソノ「でも作り終えて、より強く思ったのが、今ってたとえ日本武道館を満員にしたとしても、生活に心配ないぐらい食べられるバンドってすごく減ってるじゃないですか。音楽業界がどうとか難しいことはわからないけど、売れない時代になってて、そんな中で僕らももがきながら今に至るんですけど、仕事をしっかりやりながらでも、これだけかっこいい音楽ができるってうのをみんなに知ってほしいんです」

はい。

マエノソノ「クオリティはほんまに高いと思ってるから。今までみたいに音楽だけに時間をかければめちゃいい音楽ができますよって、だけでは成りたたない社会の仕組みになってるなってすごく感じてるんで、だからこそ余計に」

TORA「いろんなやり方があるんで、その一個として」

マエノソノ「友達のバンド仲間とか、同世代で全然違う仕事頑張ってる人にも、聴いて元気出たよって言ってもらえたら、このうえなく嬉しいなと思います」