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Catfish and The Bottlemen
(2015.02.10)

 1月28日、代官山UNIT。ソールドアウトの会場、オープニングを待ちわびるざわめき、そしてバンドが登場した瞬間に上がった大きな歓声ーーそれらは「新しい何かが確実に始まる」という期待感に満ち溢れたものだった。ああいった空気を感じさせるライヴはなかなか体験出来ない。

 レディオヘッドのマネージメントに見い出され、アルバム発売前にリリースされたシングルがすべて英国の国民的ラジオBBCで高評価され注目を浴びたという北ウェールズ出身のバンド、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン。ストロークスやアークティック・モンキーズのセンスを受け継いだギターのリフやリズム、リアム・ギャラガーに倣ったようなふてぶてしさも含んだ歌声、英国インディ特有の湿った青さ、そして恵まれたルックス。注目度が高いのも納得なバンドである。
 そのフロントマンであるヴァン・マッキャンは、MV等から感じていたイメージよりも華奢で繊細な印象でありつつ、爽やかな野心に満ちていた好青年だった。そんな彼に話を聞いてみた。

(取材・文・撮影 : 古溪 一道)

北ウェールズのランディドゥノー出身と聞きましたが、どんな街ですか?

「僕は実は生まれたのはリヴァプール郊外で、子供のときにランディドゥノーに引っ越してきたんだけど、あそこって海辺のもうホントに何もない所で、都会の生活とか喧噪に疲れたような人たちがやって来るような小さな町なんだよね。そういう場所だからロックみたいな音楽の文化が全然なくて、ライヴひとつやるにも苦労するぐらいだったんだけど…でも逆に、そんな環境だったからバンドとしての基礎体力は付いたと思うよ。ツアーに出るにも遠いから道中でバンドで議論したり話し合ったりする時間も多かったし(笑)」

自分たちの音楽に影響を与えたところは何かありますか?

「そうだなあ…僕らの曲の歌詞には『小さな町で生まれたストーリー』っぽさが溢れてるし、何もない町だったからこそ大きな街への憧れっていうか、逃避行的なムードが全体的にあると思う。まさに今こうして東京みたいな巨大な街に来てるっていう喜びとか驚きの感覚も含めて、1stアルバムにはあの小さな町から逃避してるって感覚はすごく滲み出てると思うよ」

いま話にあった歌詞に関してですが、どこかうまくいかない男女の人間模様が多く描かれていると思います。これは空想というより自己体験談が多いんでしょうか?

「うん、例えば1曲目の「Homesick」みたいに、このアルバムには遠距離のラヴソングを描いてるものもよくあるんだけど、それはやっぱり自分がツアーで家を空けてることが多いからでもあるんだよね。どこか落ち着きが無かったりイライラしてる感覚があるのはそのせいかも知れない。面白いなって思うのは…元々は『この町から出たい』って思いもあって音楽を始めて曲を書いたりしてるんだけど、でも一回離れてみると自分の好きな人たちや町に対する愛着も改めて生まれてきて…そういう自分の正直な気持ちを歌ってることが多いかな。『バーでこんな子に出会った』とか『学校の隣の子に恋した』とか、とにかくホントに小さな町である地元で自分の身の回りで起こったことから生まれた歌詞ばかりなんだよ。でも、あそこってマジで町が小さすぎて全員が知り合いだから噂もすぐ広まるし、ソングライティングって意味ではいいんだけど、いち人間としては住みにくい町かもね(笑)」

じゃあ、このアルバムに収められているのは、バンドを始めてからのこの数年間のあなた自身とも言える?

「そうだね、16歳から21歳の間の人生の要所要所をスクリーンショットして伝えてるって感覚かな」

さきほど「逃避」という言葉が出ましたが、これから書いてみたい歌詞のテーマやトピックは何かありますか?

「実はもう次のアルバムの曲は書き終わってて、これまでに書き溜めてたものも更にブラッシュアップしたりしてるんだけど、次に出そうと思ってる作品のテーマはあえて言えば『人生の素晴らしさ』かな。1枚目では、自分たちが追いかけてるものや目指してるもの、あとはその『逃避』って感覚を語ってたんだけど、次は…例えば、今は昔から自分たちが思い描いてたような道に進めてレコード契約も出来て、こうやって東京にも来れてライヴもソールドアウトしてる…なんて夢のような状況になってるのもあるから、そんな状態も反映した、『人生ってすごい!素晴らしい』っていうポジティヴな感覚を伝えるアルバムになると思うよ」

前向きな変化ですね。

「うん。僕ら、スタジアム・バンドになりたいんだよね。そういう存在になるのを恥じるようなバンドもいるけど、僕らは違う。自分にとっては(代官山Unitの)数百人だけにじゃなくって何千人何万人、それこそ東京中に届けたい、聴いてもらいたいって思ってるんだよね。それもあって次はもっとポジティヴな空気に満ちたアルバム、落ち込んでる人がいたら元気を与えられるようなエネルギーのあるアルバムを作りたいって思ってる。1枚目は『恋に恋してるアルバム』、次のは『人生に恋してるアルバム』って感じになりそうかな(笑)」

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サウンド面では、よく引き合いに出されるバンドにストロークス、そしてシンガーとして、オアシス(リアム・ギャラガー)があると思いますが、彼らから影響はやはり大きいですか?

「その2つは僕のフェイヴァリット・バンドだしよく比較もされるんだけど、やっぱり凄く嬉しいよ。僕は子供の頃、音楽の勉強とか訓練とかは全然したことがなくって、やったことといえばオアシスやストロークスの曲をギターで弾きながら自分の歌詞を勝手に載っけて歌ったりとかそんなことばっかりしてたんだけど、でも、ロックンロールってそういうことじゃない? オアシスはビートルズやストーンズのような音を出しててグレイトだった。ストロークスはヴェルヴェット・アンダーグラウンドみたいでクールだったし、アークティック・モンキーズはストロークスやリバティーンズのようだった。そうやって偉大な音楽ってものは受け継がれていくもんだし。僕らがオアシスのシンガーがいるストロークスのようなサウンドなんて言われることは本当に光栄だよ。だって僕の目にはその2つは最高のバンドとして映ってるしほとんどの人にとってもそうだと思うし」

プロデュースは、いま名前が出たアークティック・モンキーズ、そしてカサビアンやアデル等も手がけたジム・アビスですが、彼の印象はどうでした?

「レコーディング前に一緒に仕事したいプロデューサーを何人かリストアップしてて、もちろん彼の名前も挙がってたんだけど、ジムは…例えばビートルズがもしいま生き返って復活してプロデュースしてくれってお願いしに来たとしても、自分がいい曲だって思わなければ絶対仕事をしないってタイプの人なんだよね。彼がプロデュースしてきたアーティストはもちろん僕らも大好きだったし、だから彼が『プロデュースしたい』って言ってくれたことにはホントびっくりしたけど凄く名誉なことだって思ったし、自分たちの音楽に自信が持てた瞬間でもあったんだよね」

共同作業した中で刺激的なことはありましたか?

「例えば、『(ジムが手がけたアークティック・モンキーズの)このベースの音が好きなんだよね。こういうのやりたいんだけど』って僕が言ったとしたら、彼は『こういうの好きなんだ? じゃあ、絶対にやらないでおこう』って言って、意識的に僕が言ったことには反対して全く違うことをやろうとするんだよね。『君が好きなものは、これまでにもう既に誰かにやられてきたものだから、絶対に同じことはしないようにしよう』って言って、とにかく僕らならではの新しいサウンドを探そうとしてくれたんだ。さっきもオアシスやストロークスの名前が挙がってし、これまでに他にもクークスやキラーズとかいろいろ較べられたり似てるって言われたりしてきたけど、それだけいろいろ比較されるってことは、逆に言うと『これだ!』『あれと同じだ』ってものがないってことでもあると思うんだよね。他の誰とも同じじゃない自分たちだけの独自のサウンドを追求出来たのはやっぱりジムのおかげかな。素晴らしいプロデューサーで天才だよ」

では、最後の質問です。もし自分たちが音楽イベントをキュレートするとしたら、誰をブッキングしたいですか? 5アーティスト挙げてみてください。

「まずヘッドライナーは…僕らかな(笑)。儲かりそうだし(笑)。それは冗談として、まずはストリーツ。僕の大好きなアーティストなんだ。彼をトリにしようかな。みんながどう思うかはわからないけど、僕にとっては最高のヘッドライナーだね。それから、ヴァン・モリソン(注:ヴァンという名前は父親が熱狂的なヴァン・モリソンのファンだったから…という逸話もある)。そして、オアシス。あとは…やっぱりビートルズ。もうひとつは…(かなり悩んで)…やっぱり僕らを入れようかな。最近、自分たちで自分たちのことを世界で最高なバンドなんだって公言してるから、それなのに出ないってのはおかしいし(笑)。自分たちが出ちゃったら飲みながら楽しめないのだけは残念だけどね(笑)」

Catfish and The Bottlemen