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(2011.08.09)
五味岳久(LOSTAGE) ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

後藤「あともう一個訊きたいのは、奈良で録ろうと思った理由。お金の問題だけなの?」

五味「や、あのね......奈良を押したいわけじゃないですよ、別に(笑)。奈良っていうんじゃなくて、地元にいること。自分たちが生まれ育った街で自分のやりたいことをやれてるっていうことを伝えたいだけで」

後藤「わかる。でもみんなが東京に集まってくるじゃない。で、東京のほうがライブの動員は多いよ。やっぱり人が多いから」

五味「それを僕らは地元でやろうとしてるんですよね。東京と同じくらいの動員で、同じくらいのクオリティで。それはずっと思ってるんですよ。地元でまず周りのやつを納得させる、みんなが凄いって思うもんを作れたら、たぶん東京行ってもどこ行ってもやれると思うし。みんな早い段階で地元を離れるじゃないですか。それって僕は、なんか逃げてるように見えるんですね」

後藤「なるほど。でもカッコいいなと思うよ。俺たちにしても、東京的なバンドだと思われてるかもしんないけど、ずっと三浦半島に住んで音楽やってるわけで。なんか東京住むことにちょっとした抵抗はあるんだよね」

五味「前の、江ノ電の駅名使ってるやつもそうですよね」

後藤「うん。『サーフ ブンガク カマクラ』」

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五味「あれって僕らが思ってることと多分同じことで。"そこにいないとできない音楽、そこにいることで生まれる何か"っていうのがあるんですよね。逆に僕、東京に出てきたいと思ったこと、今まで一回もないんですよ。そのほうが楽やと思ったこともないし、それでいい音楽ができると思ったこともない。『なんでみんなそこに集まっていくのか、お前がそこでやろうとしてることは一体なんや?』っていうのは今も思いますね。そこに集まる意味っていうのを逆に問いたい」

後藤「あぁ、いい言葉だね。そうやってLOSTAGEは新しいかたち、ひとつのやり方を若い子たちに見せていて」

五味「やっぱりみんな、変わりたいっていう願望あるじゃないですか。大きくなりたいとか強くなりたいとか。そのために住む場所を変えたり、人が集まってるところに合流して、大きくなったような気持ちになってるだけで。でもほんとに強くなりたかったら、自分が今いる場所で自分を鍛えたり、そこで生きていく方法を考えることが大事やと思うんですよ。その根本的なとこを飛ばして大きい街で暮らす人は、何かに依存してるように見えるんですよね。もちろん、もともとそこで生まれた人はまた違う考え方なんでしょうけど」

後藤「俺が思うのは、東京みたいな街は、ミュージシャンとかいろんなアーティストとかのサロン的な役割を果たしてることで。交流が生まれるっていうか。俺も横浜くんだりに住んでると、たとえば新代田FEVER(ライブハウス)まで来るのに一時間半かかるし、ライブ終わったら終電あるから帰らなきゃいけない。だから、そういうのは羨ましいって思うけど......でもそれぐらいかなぁ」

五味「あぁ。俺らもそれぐらいですね。もともと好きなだったのが日本のオルタナティブ・ロックバンドだったこともあるけど、ブッチャーズ(bloodthirsty butchers)とかNUMBER GIRLとか、札幌や福岡のシーンっていうのがあったじゃないですか。そこで結成されて育ってきたもの、地域の持ってる特性みたいなもの」

後藤「あるよね。土地が作る音楽っていうのがあって。それはそこにいた人のエネルギーなのか地面のエネルギーなのかわかんないけど」

五味「うん。それを俺が奈良でやっても別におかしいことないやん、っていう。今までなかっただけで、俺らが奈良でやっててもし後続が奈良から出てくれば、それで俺は嬉しいし。そうなることが俺らがやろうと思ってることやな、っていうのがありますね。今は特に情報も早いし、離れ小島に暮らしてる奴が最先端の音楽作ることも可能じゃないですか。なんで東京行くの?っていうのは、昔より強く思うようになってますね」

――そういう話と今回の作品は繋がってる気がします。自主っていうかたちも、出している音も。

後藤「ね。全部一体になってるよね」

五味「うん。やっぱね、思ってることがはっきりして、それが音に出たんでしょうね。10年間いろいろやってみて、それ違うと思うこともわかったし、なんか怪しいと思ってたけどやっぱり怪しかった、っていうのも見えてきて。今はもう、俺らのやり方はこれで、こういうこと考えてて、こういう音楽が作りたいです、っていうのが言える。だからこうやってゴッチとも話せるんですよ。たぶん5年前やったらあんま話せることもなかったと思う」

後藤「なんか『次会ったら絶対俺と話してくれないでしょ?』ってずーっと言ってたよね」

五味「(苦笑)。自分で確信持って音楽作ってなかったのかな。いろいろ周りの様子見ながら"こいつ俺のこと騙してんちゃうか?"って思いながら」

後藤「『なんでアジカンが俺らをイベントに呼ぶんだ?』みたいな」

五味「そうそう(笑)。そういうのもありましたよ。なんで俺らこんなとこに引っ張り出されてんのか、って。すごい嬉しかったけど、お客さん誰も別に反応ないし。でも、こないだも一緒にやったけど、これだけいるお客さんにどうやって伝えよう、せっかくこんな機会があるんやから、どうやってあいつに聴いてもらおうか、って考えるんですよね。やっぱ自分の作った音楽聴いてもらいたい、ってはっきり思うようになったんですね」

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後藤「それで盛り上がったしね、今年。手応えあったでしょ?」

五味「うん。これちょっとイケるかもしれん、って思いましたね。だから......やっぱ変わりましたね、僕。それはでも、ああいうイベント(『NANO-MUGEN CIRCUIT』)に呼んでもらったことも全部フィードバックされた結果なんですよ。メジャーでやった経験とかも、僕が今言ってることに全部繋がってて。だから今、こうやって話せてることがものすごい嬉しいですね」

五味岳久 -PROFILE-

2001年地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。現在も奈良在住、地元を拠点に精力的に活動中。 90年代のあらゆるロック的なものに影響を受け、地方発信、地域密着をモットーに独自の活動を展開。結成当初はツインギターの4人編成であったが、幾度かのメンバーチェンジを経て前作『LOSTAGE』から3人編成にて活動。 2011年、結成10年目を節目に過去いくつかのレーベルからのリリースを経て独立。自主レーベル「THROAT RECORDS」立ち上げる。8月3日にリリースしたミニ・アルバム『CONTEXT』を携え8月5日より"CONTEXT TOUR"をスタート、ファイナルは9月23日(金)新代田LIVE HOUSE FEVER。また、Twitter上で五味岳久の描く「五味アイコン」が話題を集め、アイコンイラスト集『五味アイコンBOOK #oshare in DICTIONARY』を9月23日(金)に発売する。

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2011.8.3 ON SALE!!/ DDCZ-1763 / ¥1,680(tax in) / THROAT RECORDS