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(2011.08.09)
五味岳久(LOSTAGE) ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

2007年に行った「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 酔杯 2007」にLOSTAGEを招いたことをきっかけに交流をスタートさせた後藤と五味岳久さん。今年7月には『NANO-MUGEN CIRCUIT』のZeppNagoyaに出演、エモーショナルなパフォーマンスを披露してくれたことも記憶に新しいLOSTAGE。そのLOSTAGEが今年、結成10周年を節目に自主レーベル「THROAT RECORDS」を発足し、ミニ・アルバム『CONTEXT』を8月3日にリリースした。いくつかのレーベルを経て、何故今回自主レーベルをスタートさせることになったのか? また、地元である奈良を離れずに活動している理由とは? その経緯と現在の想いを、後藤が五味さんに訊いた。ちなみに、五味さんと言えば、Twitter上で後藤や数々のミュージシャンのアイコンを描いたことでも話題です。( 取材・文:石井恵梨子/撮影:外山亮介/取材協力:新代田LIVE HOUSE FEVER )

                     

後藤正文「今回、単純に音源が良かったから記事にしたいっていうのもあるし、どうして自分たちでやることにしたのかっていうのも訊きたくて。このキャリアの人たちが自分でやり始めたことに、どういう意味があるのかなって。彼らだけのテーマじゃなくて、今音楽をやってる人たち、これから始める人たちにとっても、何か新しい形を考えるきっかけになるんじゃないかなって」

五味岳久「ありがたいですね」

――では、五味くんが今回あえて自主でやると決めた経緯について教えてもらえますか。

五味「自主でやることを選んだって言うより、"それしかなかった"って言ったほうがわかりやすいですね。選択肢がいっぱいある中で自主を選んだわけじゃなくて、"それでやるしかどうしようもない感じになった"っていう」

――ただ、前作同様にAVOCADO RECORDSから出すこともできたわけですよね。

五味「はい。出そうって言われてたんですけど。それでやっても、もう無理やっていうのがわかってきてたから」

後藤「広がんないっていう?」

五味「一番大きいのが、やっぱお金のことなんですよね。あんまりお金お金って言いたくないけど。でも僕ら今までアルバム5枚とか出して、いろんなレーベルとやってきて。だいたいどれくらい売れるんか、みたいなのもある程度わかるじゃないですか。言っても売上5000枚とかでやってるバンドが、いきなり10万枚とか売れへんなっていう。それはもう10年やってきて気づいたんですね。で、その5000枚とか6000枚っていう枚数でフワフワしてる感じを、なんとか生活に結びつけていこうとしたら、自分でやるしかないんですね。他にやり方がない。あとはもうパトロン見つけてくるとか、現実的じゃない話になってくるから。だから、ちゃんと考えたらそれしかなかったというか」

後藤「でも話を聞く限り、やっぱりちゃんと選択しているようには聞こえるけど」

五味「あぁ......まぁ出そうと思えばね、他のレーベルから出せたんですけど。でも、けっこうしんどかったんですよ、自分の知らないところで誰かにやってもらうことが。不透明って言ったら変ですけど、レコード会社って『あの人はなんの仕事やってるんやろう?』みたいな人が社員としているわけじゃないですか。そこで『お前なにやってんねん?』って言うのも失礼やし、そもそも疑って接していくのも疲れるし。じゃあその人が何のためにいるのかも、自分でやれば実感としてわかると思って」

――知らない人が実は多いと思うんですが、実際にレコードを作って自分で売るまでには、どういう段階を踏む必要があるんですか。

五味「僕もね、自分でやりますって言って、『AVOCADOを離れます』っていう話をまずレーベルの人とするじゃないですか。そのあと何をしたらいいか全然わからなくて。でも僕らが作ってんのは音楽やから、まずは音楽作ろうと。で、いい曲ができた、揃った段階で、それを録音して形にする。そのためにエンジニアを探す。で、お金を相談する。見積もり出してもらって、いつやるって決める。それで録音して、終わったら次はマスタリング。まぁそうやって音源ができあがっていく工程は今までの経験で知ってるじゃないですか。お金がいくらかかってた、とかは知らなかったですけど」

後藤「スタジオ代とかはわからなかったけど、流れはわかる」

五味「そう。だから行き当たりばったりなんですけど、とりあえず知ってる手順に沿って連絡していって」

後藤「手探りで、一個一個ね」

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五味「うん。お金もなかったんすよ。全然。でも借金してもいいよと。だからほんまに、まずは今までやってきたやり方をモデルに、それを真似してやってみて。そこでおかしいと思うことがあったら、次にやる時にやらなければいい。一回失敗してもいいやと思って。ただ、あんまお金のこと考えてなかったから、どんどんどんどんマイナスになって、ヤバいなっていう時もありましたけど(笑)」

――ぶっちゃけ、どれくらいかかるものなんですか。

五味「エンジニアは前やってもらったKJって奴に頼んだんですけど、彼に支払ったお金、っていうか彼が所属してる事務所に支払ったのが今回60万くらい。で、それとは別にレコーディングする場所に払うお金も必要で。普通はスタジオ借りるけど、僕らお金ないから地元のライブハウスでやったんすよね。そこは安くしてもらったんですけど。あとはマスタリングに8万とか。すごい具体的な話ですけど、でもやる前はそんなにかかると思ってなくて。しかも最初のの時点でバンドの貯金が60万なかったから(笑)」

後藤「でも、60万だったら安いほうだと思うんだけど」

五味「うん。そのKJも、前にやってもらった関係性があるし、まぁ強引に頼んだっていうか。僕らがKJに払った金額と他のバンドが払ってる金額、その相場って違うと思うんですよ」

後藤「それってあんま触れちゃいけないとこだよね(笑)。でも多分違うよね」

五味「そういうことも、やりながら一個ずつわかっていきましたね」

――そうやって音源を完成させた後は、ジャケットのデザイン、広告、プロモーションっていう作業が出てきますよね。

五味「そうっすね。あの......僕お金の話しかしてないみたいでアレですけど(笑)、やっぱ人に頼むとお金かかるじゃないですか、デザインも。だから自分でやろうと。たまたま似顔絵の展示とかやらせてもらったから、今やったら僕の描いた絵でもいいんちゃうかと思って。それで自分で作ったんですけど、結局僕ら、基準が全部お金になってるんですよね、今は」

後藤「なるほどね。でも、自分たちの音楽を自分たちで売る、お金の計算をするっていうの、俺はあんまり想像がつかないっていうか。逆にタッチしたくない、みたいなところもあって。実際にやってみてどうだった?」

五味「まだ発売してないから何とも言えないけど、ただ、自分でやるって決めた時から変化があって。今までは音楽を作ってる自分がいて、それを売るための人が周りにいたわけじゃないですか。でも今は自分の中に、音楽を作る自分と、それを売る自分がいるっていうか。そのバランスをコントロールしきれてない部分もありますけど、二つの役割を自分の中に持つことで、逆に前よりスッキリした。売るためにやることをこれだけやれば、そのぶん音楽に集中できるっていう」

後藤「なるほどね」

五味「すごい健全、健康になったと思う。前は『あいつ、俺の作った音楽売るために何やってくれてんのやろ?』とか......まぁ実際言わないですけど、『そのやり方はどうなん?』っていうのは少しあったんですよね。そういうのが一切ない。自分の中に両方あるから、もう必死で作ったら必死で売るしかないし。あんまりそこにストレスはなくやれたのかな。逆に、今まで人にやってもらってんのが、ちょっとこそばい感じがしてたんですよね」

後藤「逆に良かったんじゃない? 性格的に。自分でやって不健康になる人も絶対いるから。俺とかは自分のはやんないほうがいい性格だと思う」

五味「あとは規模の問題もありますね。僕らぐらいの規模やと、シール作って送ることとかも、なんとか、めんどくさいけどなんとかなる範囲で。アジカンだともう無理じゃないですか。じゃあ次から自分でやるっていうのは」

後藤「でもみんな、ロックバンドは最初全部自分でやりたいんだよね。なんでも自分でやりたい。Tシャツとかステッカーとかも」

五味「そう。それが楽しいっていうのもあるし」

後藤「いつの間にか自分の手から離れていっちゃう。それってでも望んでないわけじゃなくて......。なんて言うのかな、デカくなっていくと、コントロールできなくなっていく部分を受け入れていくしかないところがある。まぁアジカンもあったよ。最初は俺も同じように、こそばゆいっていうか、言葉悪いけど蹂躙されてるような気分になって。今まで全部俺がやってたんだけど、でもいつの間にか誰かに任せたTシャツを売るようになって、しかもそれがダサいとかディスられて(笑)。どういうことなんだと。そういうのあったけどね」

五味岳久 -PROFILE-

2001年地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。現在も奈良在住、地元を拠点に精力的に活動中。 90年代のあらゆるロック的なものに影響を受け、地方発信、地域密着をモットーに独自の活動を展開。結成当初はツインギターの4人編成であったが、幾度かのメンバーチェンジを経て前作『LOSTAGE』から3人編成にて活動。 2011年、結成10年目を節目に過去いくつかのレーベルからのリリースを経て独立。自主レーベル「THROAT RECORDS」立ち上げる。8月3日にリリースしたミニ・アルバム『CONTEXT』を携え8月5日より"CONTEXT TOUR"をスタート、ファイナルは9月23日(金)新代田LIVE HOUSE FEVER。また、Twitter上で五味岳久の描く「五味アイコン」が話題を集め、アイコンイラスト集『五味アイコンBOOK #oshare in DICTIONARY』を9月23日(金)に発売する。

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2011.8.3 ON SALE!!/ DDCZ-1763 / ¥1,680(tax in) / THROAT RECORDS

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