INTERVIEW
───今日はどうぞよろしくお願いします。
マット・シャープ : こちらこそ。取材を受けるのはしばらく振りでね。大丈夫かな...
───大丈夫ですよ。最後の来日は2006年夏のNANO-MUGEN FESでしたが、その時の印象や想い出などはありますか?
マット : あのNANO-MUGEN FESはいい思い出がたくさんある。それは間違いない。あれは、10年近くバンドが活動を休止した後、活動を再開して最初にやったライヴの一つだったんだ。
実は、NANO-MUGENに出る前に地元のロスでやった2本のライヴでいい反応を得られたことにも驚いた。とにかく凄い熱気でめちゃくちゃ盛り上がったんだ。
本当に嬉しい驚きだった。みんな僕達がまたライヴをやると思っていなかったから、ロスだけじゃなく、全米各地からみんな見に来てくれたんだよね。
で、その次にやったのがNANO-MUGENでの2本のライヴだった。
300人の熱気にでさえびっくりしたんだから、あれほどの歓迎を受け、あれほどみんなが自分達の音楽を受け入れくれたことがどれだけ素晴らしい体験だったかは想像できるだろう。
言葉にするのも難しいくらい、自分達でも信じられなかったよ。
あの時のエネルギーがその後に続くライヴをやる上で、気持ちを本当に盛り上げてくれた。
あのNANO-MUGENでの思い出がね。自分も含め、あの場にいたみんながあの後しばらく凄く前向きな気持ちを持ち続けることができた。僕達に多くのポジティヴなエネルギーを与えてくれて、それを僕達はアメリカのオーディエンスに持ち帰ることができた。
面白いのは、普通なら「あれは素晴らしいライヴだった」というのはその時のバンドとオーディエンスで分かち合うだけものだったりするんだけど、この場合さらにアメリカのオーディエンスにも波及した。彼等も僕達が楽しく演奏するのを見て盛り上がる。
そういう意味でもNANO-MUGENの影響は大きかったと思う。
呼んでくれたゴッチにはこれ以上ないくらい感謝している。ああいう経験といのは、昔ウィーザーにいる時だったり、もっと継続的にライヴ活動を行っていた頃だったら、当たり前に思っていたかもしれないけど、今は、ああいう体験を心から感謝することができる。
───どの様な理由または経緯でこのトリビュート盤が企画されたのでしょうか?
マット : 実は、いろいろな出来事の積み重ねなんだ。
そもそも僕とゴッチが友達になるきっかけは彼が僕の窮地を救ってくれたことなんだけど、この一件もある意味、今回のリリースに繋がっていると言えるんじゃないかな。
彼は本当に僕達を窮地から救ってくれたんだよ。NANO-MUGENの初日のライヴの直前、レコード会社のスタッフがセットリストを見て、「このセットリストでは問題がある」と言いだしたんだ。僕達は「いや、そんなことないよ。このセットリストで大丈夫なはずだ。つい数日前地元でもこの曲順でライヴをやったばかりで手応えを感じている」って言ったんだけど、彼らは「でも"GETTING BY"がセットリストに入っていない」と言うんだ。で、僕は「そうだよ。ライヴで演奏したことない曲だからね。これまで一度も練習したこともないし」と言った。でも彼等は「でも、日本で凄く人気がある曲だからやらないと困る」と言うんだ。
僕はこの曲がそんなに日本で人気があるなんて知らなかったし、「実際本当に演奏できないんだって」って言ったんだけど、彼等は「いや、絶対に演奏しなきゃ駄目だ」の一点張りで、いくら「曲を覚えていない」と言っても聞き入れてもらえなかった。
で、自分達の出番まで時間がほどんどなかったから、僕はアジアン・カンフー・ジェネレーションのところに行って「助けてくれないか」って頼んだんだ。この曲をなんとか代わりにマスターしてくれないかってね。そして、僕達がライヴを終えてステージを下りた時に彼等に「どう?大丈夫そう?」ってきいたら「ばっちりだ」って言ってくれたんだ。
そういうことで、2日間とも、アンコールで2バンドがステージに出てきてGETTING BYをやったんだけど、実質演奏しているのはアジカンのほうで、僕達は彼等の周りを馬鹿みたいに踊っていたっていう(笑)。でも、凄く楽しかったし、彼等の演奏も素晴らしかった。素晴らしいカヴァーだと思ったし、最高の経験になった。そうそうあることじゃないしね。他のバンドが自分達の曲を凄いスピードで覚えて、めちゃくちゃかっこ良くプレイしてくれるなんて(笑)。それだけでいろんなことがわかるよね。
ということで、この一件もある意味、他の様々な出来事と共に今回のリリースに繋がっていると言えると思うんだ。
どの様にしてこれが企画されたか、という質問にだったけれど、「これ」という答えはないんだ。僕が発案したわけではなく、たまたまいろんなことが同時期に起きたということなんだ。
アジカンがあの曲をNANO-MUGENでプレイしたってのもそうだし、その直ぐ後くらいにヤー・ヤー・ヤーズが「THE LOVE I'M SEARCHING FOR」のカヴァーをやったというのもそう。ある友達がそれを聞いて僕に電話してきたんだ。僕はちょうど曲作りをしにスペインに向かうところだった。彼に「ヤー・ヤー・ヤーズがやったカヴァー聞いたか?」って言われて「いや」と僕は答えた。すると彼が「いやぁ、めちゃくちゃいいんだよ。絶対に気に入るよ」と言って教えてくれた。
それと同じ頃にまた別のバンドも他の曲のカヴァーをやってたんだ。
で、スタッフの一人が「凄いじゃん。あのバンドも、このバンドも、今レンタルズのカヴァーをやるなんて」って言ったんだ。僕が全く知らないところでね。で、友達のアーティストにもそのことを話をしたんだ。ティーガン&サラとかね。
で、彼女達も「だったら私たちもやりたい」って言ってくれてね。凄く自然な流れでね。というのも、僕達は家族ような間柄で、彼女達は僕の妹のような存在なんだ。それで彼女達も1曲カヴァーをしてくれて、同様にアッシュも友達として1曲カヴァーをしてくれた。でも、実のところほとんどの参加アーティストは直接知り合いというわけではなく、いつの間にかカヴァーをやっていて、その時期がたまたま重なったということなんだ。
───なるほど。では、実際数々のカヴァーを聞いてみて如何でしたか。
マット : 個人的には自分が人のカヴァーをすること自体あまり好きではなかったんだ。
ウィーザーにいた頃から、ソロになってからも、トリビュート・アルバムが流行ったことがあって、カヴァーをやらないかという依頼はよく貰ったんだけど、あまり興味がなかった。
というのも、やはりオリジナルに勝るものはないと思っていたから。でも、今回のカヴァー曲を聞いてみて、中にはオリジナル以上に曲を生かしていると思えるものもある。
───またまたご謙遜を。
マット : いやいや、本当の話だよ。
───わかりました。実はこのインタビューはアルバムのライナー用ということもあり、実は各11アーティストとの関係性と各曲へのコメントなどを頂ければと思っているのですが。
マット : うわぁ、困ったなぁ。話したように、僕が率先してみんなに声をかけて作ったというわけではないから、正直、どのアーティストもそこまで深く知っているというわけではないんだ。ちょっとしたことくらいなら話せるけどね。中には全く知らないアーティストだっている。曲についてコメントすることくらいはできるけどね。
INFORMATION
レンタルズトリビュート
LOST OUT IN THE MACHINERY2010.6.23 ON SALE!! / KSCP-936 / ¥2,520(tax in) / only in dreams / Ki/oon Records 元ウィーザーの元祖泣き顔男、マット・シャープ率いるレンタルズ。彼らの楽曲を愛するバンド達によって、今極上ソングが蘇る!日本盤のみレンタルズ最新シングル"A ROSE IS A ROSE"の日本語ヴァージョン(THE RENTALS & MASAFUMI GOTOH)をボーナストラックとして収録! |
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