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岩崎愛 岩崎慧 インタビュー
(2015.04.17)

バンド“セカイイチ”で活躍しながら、ソロでも活動する岩崎慧。そして、シンガー・ソングライター、岩崎愛。言わずと知れた兄妹であり、数年前から毎年恒例で、お正月やお盆に地元・大阪に帰省した際に、“岩崎家お里帰りライブ”を開催している。今年2月には、「brother & shister Tour」と題して東名阪ツアーも展開。そんなふたりが、RECORD STORE DAYに、7inch『Brother & Sister』をリリース。ふたりの息の合ったを超える!溶け合うようなハーモニー、すぐそばで歌ってくれているような体温の伝わる温かい1枚となった。口笛と弾むメロディが春風のように心地よい「Brother & Sister」、ノスタルジックな風景を想起させる「Eight Sister」、アコースティック・ギターとふたりのハーモニーが牧歌的響く「name」。エバーグリーンな名曲の完成だ。
ここでは、ふたりの個別インタビューをお届け。妹が、兄が、目の前にいないからこそ、言える話も飛び出した。

(取材・文:千葉明代)

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岩崎愛 インタビュー

『Brother & Sister』はとっても温かい音楽で、ふたりの体温が伝わってくるような歌でした。おふたりの呼吸、間の取り方のハモリぶり、それはやはり兄妹だから成せる業という感じでしょうね。

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「ありがとうございます。良いか悪いかは置いといて、面白い話があって。一緒に住んでいるときに、あるとき私が学校から帰ったら、兄ちゃんが宅録で録音した音源を聴かせてくれて。“愛、おもろいねん。今から俺と同じようにお前歌え”って言われて、歌って録音をして。“これは俺が歌ったやつね、こっちは愛が歌ったほうね。俺の歌った声の速度を速くすると愛と同じ声になるねん!”って。同じ声になるんですよ(笑)。“わー気持ち悪い!”って(笑)」

えー、面白いですね。不思議です。でも今回の曲も、ふたりの声はそれぞれにカラーを出しているのに、その色が溶け合ってひとつの色になっているような印象でした。

「血ですね。不思議ですけどね。フェイクとかも何も打合せんでも、おなじとこを歌ったりしちゃうんですよ。歌い方とか声の発声とか、ほぼ一緒なのかなって感じますけどね」

いろいろなミュージシャンと共演されても、そういうことはなかなかないですよね?

「そうですね。似てるなとかはあるけど」

子どものころに、一緒に歌ったりしていたんですか?

「一緒に歌ったりっていうのはないですけど、同じ音楽は共有していましたね。特に一番音楽を吸収する、中学とか高校生のころに、兄ちゃんがちょうど音楽をやり始めてギターを弾いてライブハウスに出たりしていて。自分の知らない音楽をたくさん持って帰ってきていたので、それを勝手に漁って聴いたりしてましたね(笑)。あとはお母さんが音楽好きで、スティーヴィー・ワンダーとかマイケル・ジャクソンとか王道な良い音楽を聴いていたので、それを知らず知らずに聴いていました」

愛さんと慧さんは、4歳違いですよね。

「そうです」

4つ上のお兄さんが聴いている音楽を愛さんが聴いていて、同級生とは音楽の話は合わなかったんじゃないですか?

「全然違いましたね。同年代の子達とは、聴いている音楽はまったく合わなかったです。高校生くらいのときに、なんでか知らんけどユニコーンにはまっていて、学校の友達は奥田民生ならわかるけどって感じでしたね(笑)」

そういう意味では、音楽面ではお兄さんの影響がかなりありますよね。

「強いと思います」

当時の愛さんにとって、慧さんはどんな存在だったのですか?

「そうですね。小さいころからずっと仲良くて、可愛がってくれて、普通にお兄ちゃんが妹にやるだろうっていう意地悪みたいなことは、まだやるやろっていうくらいの時期にはもうなくて、可愛がってくれて。“俺は兄貴やぞ”みたいな感じを見て、“うちのお兄ちゃんは一歩先を行っていてカッコいいぜ。うちの兄ちゃんは特別だぞ”みたいなに思ってたんで、お兄ちゃんにいろんなことを教わるのが楽しかったですね。その教わったことを“知らんやろ?”みたいに、同級生にひけらかしたりして。自分より一歩先を行ってる兄ちゃんを見て“やることがカッコいい、真似しよう”って思ってましたね」

自慢の憧れのお兄さんだったんですね。

「そうですね。恥ずかし(笑)」

いいじゃないですか(笑)。お兄さんは、中学生から音楽を始められたんですか?

「そうですね。あの人、高校を中退なんですよ。音楽は中学からやり出して高校を辞めて、バイトしながら音楽をしてましたね」

まず、ギターを買って。

「いとこが、ミュージシャンで高鈴っていうんですよ。その高鈴のお父さんがクラシックギターの先生をやっていて、生徒さんからアコースティックギターをもらって。“僕はアコースティックは弾かないから、慧いるか?”と。それでもらって、それを弾き出したんですよね」

愛さんは、羨ましく見ていたんですか?

「最初は全然興味なかったんですよ。だけど、ひとりで練習するの寂しかったんでしょうね。“愛、教えてやるから来い”って言われて、“えー別にやりたないし、指が痛いから嫌や”って言いながら教わって。私も全然弾かない時期があったんですけど、何故かいつの間にかまた弾くようになって。兄ちゃんは自分のギターを買って、“これはお前にやるわ”って言われて、そのギターをもらって」

そういうエピソードを聞いても仲良し兄妹ですよね。お兄さんは、そこから本格的に音楽の道を進み出したわけですけど、愛さんはその姿をどう見ていましたか?

「最初は、高校を辞めはったときは、大丈夫かな?って思ってたんですよね。高校行っているときもサボったりしてたから、“兄ちゃん苛められてんのかな?”って心配になったんですけど、高校辞めて自分のやりたいことが明確になって、脇目もふらずじゃないですけど、どんどんそれに時間を費やしてる姿を見てたら、やりたいことが見つかったんだな、よかったなって思いました」

愛さんは、お兄さんのライブを観に行ったりはしていたんですか?

「観に行ってましたね」

ステージのお兄さんを観てどう思いましたか?

「スゲェと思いましたね。ライブを観に行くことも始めてやったんで。強烈に記憶に残っているのは、兄貴が“セカイイチ”ってバンドを組んでデビューが決まって、みんなで上京する前の大阪での最後のワンマンライブが十三であったんですね。そこはピンク街で、高校生やし、そんなところに行くのも初めてだしドキドキしながら観に行って。ソールドアウトで人もギュウギュウの中の初めてのライブで、大きい音で耳がキーンとする、ドラムの音が胸を打つ、ライブってスゲェって思って。そのときに『ひこうき雲』(荒井由実)をカバーしていたんですよね。初めて『ひこうき雲』を聴いたんですけど、“すげえいい曲だな”って思って、あとで兄ちゃんに誰の曲か聞いて。後々自分でカバーもすることになるんですけど(笑)」

愛さんにとって、初のライブハウス体験がお兄さんのライブだったんですね。ライブでの興奮と身内がステージに立っているっていうドキドキ感と。

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「そうですね。すごくドキドキしましたね。あんまり言うと恥ずかしがるかもしれないけど、兄ちゃんが音楽でやっていくって決めて、家の両親は普通のサラリーマンと専業主婦なんで、“人と違った道を進むのは、人の3倍以上努力しないと出来ないことなんだよ”って兄ちゃんが言われているのを横で見てたんです。うちが同じ道に進むのを、相当両親は嫌がってたんですよね。それでうちが高校卒業で進路を決めるのにすごく時間がかかっていて。“お前はどうするんだ?”って父さんに言われて。ひとりで悩んで悩んだ末に出した結果が、“やっぱり自分もやりたいことをやる。音楽をやる”ってことだったんですよ。その気持ちを父さんに言ったら、その悩んだ感じもわからへんやろうし、心配だから、“とりあえず、大学出ろよ”って言われたんですよ。それがすごいショックだったんですよね。それで、これを相談できるのは兄ちゃんしかおらんと思って、兄ちゃんが夜中にバイトから帰ってくるのを待ったんですよ。“おっ、こんな夜中にどうした?”“ちょっと話したいことがあるねん”って、父さんに言われた話をしてショックだったって話したんですよ。“そうか、お前も同じ道を選んだか。うれしいけど、複雑やな。でも父さんは心配してくれてるからやで”って朝まで話して、一緒に眠ったっていう(笑)」

まさに2曲目の『Eighteen Sister』の実話ですね。

「そうなんですよね(笑)」

愛さんが、音楽の道を進むことを決意したのは、お兄さんのデビューが決まったり活躍していたことが、きっかけとしては大きいですか?

「当時から、ライブハウスに出だしていて。“ライブハウスってどうやって出るの? デモテープって、どうやって作るの?”って、兄ちゃんに聞いたりはしてたんですけど、岩崎慧の妹って知られるのは、すごい嫌で。兄貴の影響はあったけど、自分も音楽が楽しくなってのめり込んでいって、やりたかったんですよね。兄ちゃんと比べられたり、妹だからって近付かれるのも嫌だったんです。思春期でしたね(笑)」

その後、それぞれ別に活動されていたふたりが、お正月、お盆に帰省したときに“岩崎家お里帰りライブ”を開催されていた。きっかけは、お世話になっている方が、「帰って来てるついでに一緒にライブしたらどう?」から始まったということですが。

「はい。やり出して、2〜3年ですかね。ふたりが十代からお世話になっている『ムジカジャポニカ』っていうライブバーがあって、そこの店長さんが夕凪って言うバンドのせい子さんて方がいて。音楽界のうちらの母みたいな存在なんですけど、その方から“あんたら、帰ってくるんやったら、ここで一緒に『お里帰りライブ』しなはれ”って言われて、始まったんですよね」

初めて一緒にライブしたときの感想は?

「以前も一緒のステージで歌ったことはあったんですけど、完全ふたりは初めてかな。だいぶユルかったですね(笑)。実家帰って、“明日何歌う?”“それでいいわ”“ええんちゃう”って話して当日を迎える感じですね。“京都でもやってよ”“東京でもやってよ”って言われてやり出して、もうお里帰りではなくなったんですけどね(笑)。それが今回の作品にもつながっていって」

音源作品としては、兄妹での制作は今回の『Brother & Sister』が初めてですよね。

「はい。“RECORD STORE DAYでレコードを出さない?”ってスタッフさんに言われて、誰かとやったら面白いかもねって話も出て、ちょうどふたりでライブもやったりしていたので、お兄ちゃんとやったらいいんじゃないってなったんです。兄ちゃんにも言ったら、“うん、ええよ!”って話になって作り出しました。テーマは“兄妹”やから、俺らが思うような兄妹って曲を、ふたりで書き合ったらいいんじゃないかと話して。そしたら、兄ちゃんが2曲作ってきてくれて、“ええやん”ってなったんです。1曲目の『Brother & Sister』は私発信で。兄ちゃんからはこういう曲が作りたいってアイデアがあったんで、それを参考に作りました」

Brother & Sister東名阪ツアーのことを綴った愛さんのブログに、“気持ち的にも色々なことが楽だったなぁ”と書かれていましたが、その感じは楽曲に表れているように感じました。ひとりで歌うよりも気負いがない“リラックス”した感じが声に出ているというか。

「そうですね。ひとりで歌うときは全責任が自分ですから(笑)。わかんないですけど、お互い何かあったらどうにかしてくれるだろうって気持ちがある気がします(笑)。気持ち的にはずっと楽ですね」

『Eighteen Sister』は先程話にも出ましたが、『name』も慧さんの作詞作曲による楽曲で、愛さんに向けたれた想いが沁みますね。

「『Eighteen Sister』は、まさにさっき話した日の歌だと思うんですね。その頃は、私は、今より暗くて“どうせ、うちのことなんかこう思ってんやろ”ってところから始まって、尖んがりまくってたんですよね(笑)。危なっかしく見えてたと思うんですけど、兄ちゃんはそんときの私が神秘的やったって、気持ち悪いこと言ってましたけど(笑)。この曲を聴いたときは、うれしかったです。兄貴が作る曲が昔から好きだし、普通にファンなんですよね。だから、“いいやん”って思って、“もっとこうしたら、こうしたら?”ってことが言えなくて(笑)。今回の曲は、何もすり合せてはないんだけど、歌詞の中で言いたいことが被っているんですよね」

『name』は、愛さんの名前、そして“愛”の意味というダブルミーニングな楽曲ですね。

「歌詞のいろんなところに、思い起こせるエピソードが散らばっているんですよね。誰得ってオレ得ですよね(笑)。自分の名前が嫌だった時期があって、そのことについて話したことがあったんですよね。“愛の意味がわからん”って話をしたんですよ。“愛される感は感じるけど、愛する意味が全然わからん”って、そんときのことを覚えてくれていて書いてくれたんやなと思って。“お前の名前は『愛』やろ。名前って一生の課題なんやん? って俺は思ったことがあって。お前はそうなんじゃない?”って言われてことがあって。スポーンとしっくりきましたね」

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慧さんは、愛さんとのそういうシーンを大切に受け止めてくれて、覚えてくれているんですね。

「そうですね。覚えてくれていたんだなって、それを歌で知ることができるのは、面白いですね」

この1枚を聴かせてもらって、自分の大切な人を思い出してその人への想いを募らせることができました。

「ありがとうございます。兄妹だけじゃなくても、そうやって自分に置き換えて聴いてもらえたらうれしいです」

そして、5月からは北海道、仙台、東名阪を廻るリリースツアーもありますね。

「すごく楽しみです。ライブは全部に言えることですが、その会場とその雰囲気と自分の気持ちの高揚感、全部が相俟って毎回変わるじゃないですか。だから、毎回何が起きるか、楽しみですね」

今回の作品は、RECORD STORE DAYにレコードでのリリースとなります。この日、たくさんのミュージシャンの方がレコードをリリースされますが、気になる作品は? 

「樽木栄一郎さんが好きで、樽木栄一郎さんのレコードが気になります。シンガー・ソングライターなんですが、このジャケットを描いている方が、ライブペインティングもされるんですよ。MCはほとんどしなくて、樽木さんが端っこにいてライブペインティングが始まって、どんどん風景が変わっていくんです。それがこのレコードにも組み込まれてるんじゃないかと思います。聴きたいですね」

岩崎慧 岩崎愛『Brother & Sister リリースツアー 〜ふたりは兄妹〜』

  • 2015年05月06日(水) 北海道 札幌musica hall cafe
  • 2015年05月09日(土) 大阪 西長堀cafe Room
  • 2015年05月10日(日) 大阪 西長堀cafe Room
  • 2015年05月16日(土) 愛知 大曽根Blue Frog
  • 2015年06月04日(木) 東京 下北沢440
  • 2015年06月14日(日) 宮城県 仙台 Bar and Event hole Tiki-Poto

⇒ 詳細は 岩崎愛オフィシャルサイトにて