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(2012.06.02)
山本幹宗(The Cigavettes)×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

今年4月にリリースした2ndアルバム『We Rolled Again』が話題のバンド、The Cigavettes。耳に残る極上のメロディ、ピアノやフィドルなどもアレンジされたサウンド、ビートルズ、ビーチボーイズなど彼らが聴いてきたであろうロックンロールの先人たちへのオマージュとも言うべき印象的なフレーズも引用された作品は、一度聴いただけでは日本のバンドとは想像も出来ない。6月4日(月)には広島CLUB QUATTROで行なわれる「NANO-MUGEN CIRCUIT 2012」 に出演するThe Cigavettesから、フロントマンでありギタリストの山本幹宗さんを迎えて、「NANO-MUGEN CIRCUIT 2012」前に後藤正文との対談を実施。The Cigavettesの音楽スタイルについて聞いた。
(司会・文・構成:only in deams編集部/撮影:中川有紀子)

――後藤さんと山本さんは、どういったきっかけで出会ったのですか?

後藤正文「The Cigavettesを最初に聴いたのは、4年くらい前のミニ・アルバムで。すごくいいなと思ったけど、若者なのに参照している音楽がすごく古くて変わってるなとも思っていましたね。これから、どうなっていくんだろうなって思っていたら、くるりのツアーに幹宗(山本)がギターで参加したりもして」

――そこまで、後藤さんが一方的に知っていた感じですか?

後藤「そうですね。ミニ・アルバムでThe Cigavettesの存在を認知して、次のアルバムは、幹宗本人から貰ったんだよね。そのアルバムは、ミニ・アルバムから比べたら音とかも段違いに良くなっていて、"どうした?"って驚いたくらい(笑)。それで、機会があったら俺たちのツアーにも呼びたいと思っていたんだけど、俺たちが対バンツアーをしばらくやってなかったから。今回は是非、『NANO-MUGEN CIRCUIT』に呼びたいなと思って。The Cigavettesの新しいアルバムもすごく良かったし」

――山本さんが後藤さんにCDを直接渡す以前のやりとりは、Twitterを通してですか?

後藤「そうそう。幹宗は、俺のことを"Twitterが面白い人だ"って言ってただけだから(笑)。『snoozer』の誌面で」

山本幹宗「『snoozer』の誌面の中で、俺に寸評のように発言を求められる企画があって、ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、"Twitter上で面白いおじさん"って(笑)」

――Twitterではフォローをし合っていて、そこから交流が広がっていったんですね。

後藤「Twitter上で、俺の発言に対して幹宗が被せてきたりして、幹宗から"飲みに行きませんか?"って感じになって。俺の中では、The Cigavettesの奴らはアジカンのことは、嫌いだろうみたいに思っていたし、『snoozer』のインタビューとか読んでいるとホントに生意気だったから(笑)。"どういう人たちなんだろう?"って、ちょっと恐々飲みに行ったんだけどね」

――顔を合わせた初めての場がそこだったんですね。

山本「そうです。Twitter上でやりとりしているのに、それだけっていうもの気持ちが悪いなと思って。一緒に飲んだら、面白いだろうなとも思ったし。"もし機会があったら飲みに行きませんか?"ってメールしたんですよ。そしたら、すぐ"今週の木曜"って返事が来たんです」

――昨年11月には、後藤さんが定期的に行なっている弾き語りライブイベント「THE FUTURE TIMES」の福岡公演に、The Cigavettesもアコースティック・セットで出演されました。

後藤「このイベントは、なるべく開催する土地のバンドを呼びたいっていう思いがあって、北海道でやったときは、吉村さん(bloodthirsty butchers)に出ていただいたりして。福岡でやるんだったら、福岡出身のバンドに出てほしいと思って。The Cigavettesのライブを、アコースティックだけど見てみたいと思って声をかけたんです。能楽堂(住吉神社能楽殿)とThe Cigavettesっていうのはすごく違和感があったけど、面白かったね」

山本「すげえ楽しかったですよ。あのイベントは面白い試みですよね。最初にトークがあったり」

後藤「基本的には、被災地への意識を持ってもらうってためのライブだから。あとは、アコースティックのときは、変わった場所でやってみたいっていう思いがあるんだよね。だから、能楽堂でやったんだけど」

山本「能楽堂は、独特の響きがあってすごい気持ち良かったですね。自分の歌声に酔ってました。俺、歌上手いなって(笑)」

――The Cigavettesは、アコースティックでも活動をされているんですか?

山本「よくやりますね。この前も福岡でキャンペーンがあって、飲み屋でアコースティックライブをやってきて。小回りがきくから、好きなんですよアコースティックでやるのは」

後藤「The Cigavettesは、若手バンドの中では音楽的に融通が利くよね。上手ってことなんだけど」

山本「酔ったお客さんには、"長渕!"とか言われたりして、歌ったりもするし」

――後藤さんから見たThe Cigavettesというのは、どういうバンドですか?

後藤「幹宗と音楽の話をするとすごく詳しくて、マニアなんですよ。そういう聴いている音楽から自分たちの音楽にいろいろ引用しているっていう。引用の仕方は、若いバンドの中では幅が広いんじゃないですかね。悪い言い方をすると、おっさんっぽい感じで。日本人のバンドのアルバムを聴いて"これ、洋楽かな?"って思うことがあるんだけど、The Cigavettesの新しいアルバムを聴くと、どこの国のバンドかわからない感じだよね。今だとUSインディっぽくしたいって思ったら、日本人がやっても真似できるんだけど。今回の作品のインタビューで幹宗は、"アメリカなんですよ"って言ってたんだけど、どう聴いてもそう聴こえないよね」

山本「あれは、嘘ですよ。"イギリスだ、イギリスだ"って言われてムカつくから、"アメリカだ"って言っちゃったんです。アメリカでもあるんですけど、特にどこにとか何にとかはないんで、自分の思い出に影響を受けているっていうか。危険ですよね、具体的なロールモデルのあるレコードを作るのは」

――山本さんは、アルバムの中で引用していることを、全く触れられずただカッコイイと言われるのも、ちょっと違うなっていう思いもあるんですよね?

山本「そうですね。そこまで、僕はいい曲を書けないんでって」

――意図があって引用しているんですか?

山本「そういう曲を作りたいと思ってやっていくと、原曲と似てくるじゃないですか。似たときに、そのままにしちゃうんですよ」

後藤「隠さないでね」

山本「むしろ、より似せたい。大胆に引用していたら、逆に怒られないんじゃないかって思って」

後藤「ヒップホップの登場もあるけど、俺らとかもサンプリングが普通になってきた世代で。それに対して抵抗はないっていうか、いろんなバンドが模倣の繰り返しでツリーになって、その中からオリジナリティが出てくると思うんだよね。どのバンドだって最初は、物真似みたいなところから始まるんだけど。そこに対して、リスナーたちが"パクリだ!"とか言ってしまうような潔癖性だけが上がっているのは、怖いなと思うけどね。"いやいや、そうじゃくて。こういうゲームなんです"っていうか。ロックンロール自体が、そういうカタチで回転してるから。そこを面白がるジャンルでもあるんですよね、本当は」

山本「って、俺が言ったことにしておいてください(笑)」

――「この曲って、○○のパクリじゃないんですか?」的なことを、Twitterで言われたことはあります?

山本「ないんですよ。もしあったら、何かあげようって思うんですけどね。これは気が付かないだろうなって思うフレーズを、ちょいちょい仕込んでいるんで」

後藤「さすがに、幹宗が言うことを俺でもほとんどわからないから、もっと若いリスナーはわからないんじゃないですかね。若いバンドだけどその視点が変わってると思う、音楽への参照点が。玄人趣味っていうか」

山本「でも、結構ビックリするようなちょっとダサいと思われてる曲とか引用してたりしますよ。ビー・ジーズの『Night Fever』とか」

The Cigavettes

2005年4月、福岡にて山本幹宗(g&cho/ 弟)と山本政幸(vo / 兄)の兄弟を中心に結成。メンバーは、小田淳之介(g&cho)、篠崎光徳(b&cho)、戸高亮太(ds&cho)。2007年にミニ・アルバム『taste of the sun』でデビュー。2008年には「CLUB SNOOZER」福岡公演にレギュラー出演しながら、6月に自主レーベルより『Out Of The Race EP』をリリース。2009年9月にはUKロックの祭典「BRITISH ANTHEMS」に出演。同年、山本幹宗はくるりの全国ツアー「くるりワンマンツアー2009 〜敦煌(ドンファン)〜」にサポートギタリストとして参加し、話題を集める。2011年に上京、同年4月に1stアルバム『The Cigavettes』を発表。2012年4月、2ndアルバム『We Rolled Again』をリリース。同作を携えたツアーのファイナルで、7月12日(木)に渋谷O-WESTに登場する。

・The Cigavettes OFFICIAL SITE
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The Cigavettes

2ndアルバム『We Rolled Again』

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