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(2010.06.13)
NADA SURF × 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION) -前半-

 アナログ・レコードがテーブルの上に無造作に並べられた取材部屋に入って来た途端、マシュー・カーズとアイラ・エリオットの二人は大喜び。しかも、ソファーのシートにはナダ・サーフの新作『if I had a hi-fi』のジャケットのアートワークをプリントしたファブリックが!
 たくさんのスピーカーやアンプが積み上げられたそのジャケットのアートワークは、まさに今回の対談の内容にピッタリ。去年の〈NANO-MUGEN FES. 2009〉で共演して以来、すっかり仲良しになったASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文と、初のカヴァー集にしてニュー・アルバム『If I Had A Hi-Fi』(日本盤のみのボーナス・トラックにはASIAN KUNG-FU GENERATIONの「Mustang」カヴァーも!)をリリースしたばかりのニューヨークの好パワー・ポップ・バンド、ナダ・サーフの音楽談義、まずはその前半をお届けです!
(司会・文・構成/岡村詩野  協力/小木曽涼子)

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マシュー「ワオ! すごい数のヴァイナル(レコード盤)だね! どれどれ、ザ・フー、ケイト・ブッシュ、ゴー・ビトゥイーンズ...色々あるなあ...」

後藤「僕はこのアルバムを聴いて、ギターを買いに行ったんですよ」

――オアシスのファースト・アルバムですね。

マシュー「オアシスかー。彼らが最初に出てきた時は複雑だったよ。僕らは当時スーパードラッグとツアーをしていてね。彼らがオアシスをそれほど好んでいなかったんだよね。ビートルズっぽいのはどれも気に入ってなかったからなんだけど。僕はどう思っていいか分からなかったんだよ。でも、スペインのバーにいた時に、「Supersonic」がステレオで流れたんだけど、すごく驚いたよ。あれ、この曲いいなあって思って。「Live Forever」のPVを観た時も、メイン・フレーズが好きで、夢中にさせられた。実は『モーニング・グローリー』が出た時、僕は『Guitar World』って雑誌のエディターとして働いていてね、ノエル・ギャラガーの取材に行ったことがあるんだ」

――へえ! それはいい話ですね!

マシュー「ああ、ホテルで会ったんだけど、僕は取材前、彼の事をきっと嫌な野郎なんだろうなって予測してたんだ。だってインタビューでは、いつも彼はめちゃくちゃな事をよく言ってたからね。でも、座ってお茶したら、彼って最高にナイスな人なんだ。とてもかっこいいし、賢いし、面白くて、謙虚で、この後何してるの?っていう感じに気さくなガイだったんだ。最高だったよ。驚くべきセンスの持ち主だしね。でもね、何が本当に面白かったかと言えば、取材のために音声を録音を始めた途端、最低な話をし始めたってことかな(笑)。本当に面白い事を彼は言っていたよ。でも、僕は彼のソングライティングは本当に好きだよ」

――いかにも彼ららしいエピソードですね。

imge_002マシュー「あと、もっと面白いのはね、その数年後、スペインでフェスがあったんだけれど、彼らが深夜の2時にプレイしてた時があってね。僕は人混みからノエルを見ていたんだけど、よく見たらそれは彼じゃないんだ(笑)。後で分かったのは、夏の間中、ノエルはイギリス外のツアーへ出たくなくて、自分と同じ髪型で同じ服装で、何もかも同じに似せた誰かを送り出していたらしいんだよ。つまり、影武者だったってわけ(笑)。誰も気付いてなかったね。でもアイラと僕は大いにウケたよ。ま、でも、なんにせよ彼らはすごい才能の持ち主さ。前にゴッチ(後藤)は彼らの曲をプレイして曲作りを覚えたって話してくれたけど、それはとてもいいことだよね。お手本としてパーフェクトな例だと思うよ」

後藤「マシューたちにとって他のバンドの曲をプレイするっていうのはどういう意味があるのかな? 今回、オリジナル・アルバムじゃなくて、カヴァー・アルバムをリリースすることになったいきさつなんかも教えてほしいんだけど」

マシュー「まずは、すぐにでも録音できるものが必要だったんだ。実はニュー・アルバムのための新曲も秋までに出来上がっていたらいいなとは思っているんだけど、実は、バンドのキーボードも手伝ってくれてる友人がスタジオを始めてね。そのため僕らのツアーになかなか来られなくなってしまったんだ。そこで僕たちは取り引きをした(笑)。代わりにカヴァー集を彼のスタジオで作ってお金を彼に落とすってね。僕たちが毎週払っているいくらか以上のお金が彼の手元に入ればツアーに来てくれるだろう?(笑) っていうのは、まあ、一応のきっかけであったんだけど、トリビュート・レコードを作るのはちょっとした楽しみではあったんだ。ここには昔やったことのある曲もあったけど、僕らはカヴァー集を作るのは初めてのことだったからね」

――もともと、カヴァー・アルバムのアイデアは長年温めていたのですか?

マシュー「全く! 全然思いもしなかったよ。普段、カヴァーもそんなにやらないしね。なぜなら普段は、僕たちがツアーから戻ると、ダニエルとアイラは"夕食に出かけようぜ!パーティーに行こうぜ!"って僕を誘ってくるけど、僕はいつも次のアルバムに向けて曲を書かなきゃいけなくって。そんな余裕もまったくなかったからなんだ」

アイラ「そ。マシュー、いい曲を早く書けよ。俺は退屈だ!ってね(笑)」

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――スタジオでちょっと遊び感覚でカヴァーしたりすることもないんですか?

アイラ「そうだね滅多にないね」

マシュー「僕が前にやっていたバンドでは、イギー&ザ・ストゥージズのアルバム『ファン・ハウス』をやったりしたよ。ほぼアルバムの全曲をね。僕たちはよく練習するために集まって、ただそのアルバムをプレイしていたよ。一緒に輪になって立って、本当にクールだったよ。それでお互いのことを知れたりもしたんだ。クラッシュの新しい3曲を演奏し始めた時は、毎週のように演奏していたよ。音源にはしてないけどね」

imge_005後藤「僕たちは、Eのワン・コードとか、まずキーを決めたりとかしてやることの方が多いかな。大学の時、音楽を始めた時に、接した友達や先輩とかにブルース系のギタリストたちが多かったからブルース・セッションとか始まっちゃうことが多いんだ」

マシュー「うんうん。それも凄く楽しいよね」

後藤「でも、何年か前、まだ新人の頃は、フェスに出た時とかもサウンド・チェックの時間がロクになかったから、しかも自分たちで出ていって、サウンド・チェックをしなくちゃいけなくて、それがすごくもどかしかったんで、いきなり、カヴァーを延々とやって、サウンド・チェックしてたな。その時にやっていたのは、オアシスの「コロンビア」っていう曲で」

――まさにオアシスのファーストに入っている曲!

マシュー「わかるよ! 練習に行ったり、家で弾いている時とか、メイン・フレーズとか、理解できないものを、自分で学んだりしていて、自分で解読できたりすると、嬉しくて、練習、リハーサルに行っても弾きたくなるもんね。今これを弾きたいってね(笑)。時々、ガレージとかのロックな曲から、気持ちを盛り上げるために、エネルギーをもらうこともあるよ」

後藤「あとはあんまり難しくなくて良い曲ならカヴァーしたいな(笑)

マシュー「アハハ! 同感! "ちょっと見てくれよ、この曲2コードだぜっ!"て気分の時って盛り上がるよね。うん、分かるよ」

後藤「難しい曲とか、完成されすぎちゃったりしてる曲だと、カヴァーしてもどうしようもないっていうか、自分達のものにならないんで。でも、シンプルな曲だと、なんか隙間が残ってたりするんだよね」

――マシューとアイラは、今回、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲を実際に取り上げてみて、どういう印象を持ちました?

マシュー「すごく好きだよ。本当に素晴らしいと思う。興味深かったよ。他にも少年ナイフやスピッツや...日本のカヴァーのこれだけやったことも、興味深かった。 歌詞の意味とかはなかなか理解できないところもあるんだけど、imge_006今朝もリリックを読んでて、また理解していたんだ。「Mustang」の中にこういう歌詞が出てくるんだ。"we destroy the sky by doing what we like..."読んでいて怖かったよ。最近、誰かから聞いたんだけれど、オイル・ストーヴが人類自滅への一歩だったかもしれないって。とにかく、それは曲の中のたった一節の文なんだって分かってるけど、とっても面白く鑑賞してたんだ。はっきりしない感情みたいなものがちょっとあるようで、"promise hardly anyone has made"のところとか、でもしっかりと強調してるような感情も持ち合わせてて好きなんだ。本当にやれて良かったよ。それにとってもキャッチーだよね。3日ほど、メロディーが頭から離れなくて、僕は病気みたいに狂っていたよ(笑)」

後藤「いやあ、嬉しいけど、なんか申し訳ない気もするな(笑)」

マシュー「「Mustang」の歌詞が象徴しているけど、キミたちの新しいアルバムでも言えるのは、僕はこの二つの要素がとても好きなんだ。一瞬一瞬や、人生の断片、個々の人間とかの悲しい小さなこと。後悔してしまう出来事が描かれていること。でも、色んな曲があって、他の残りの部分では、前に進んでいく、生き続けていくような、少し、タフな愛なんだ。そこが僕が特に好きな部分。さあ、大丈夫、行こうっていう。その両方を持っているとこがとても好きなんだ。それは、普遍的な二つの事だね。けれど、さっきも言ったけれど、ディーテールがとても良いよね。小説的で、具体的で、クールだね。機能しているし、繋がっているんだ。全部の歌詞をじっくりと見れて、僕は本当にもっと君のファンになったよ。それに、アイディアがいっぱいあって、とても豊富なんだ。だから全て素晴らしいよ」

後藤「嬉しいな」

マシュー「いい歌詞ってさ、なんていうか、ある事柄が、人をとらえたり、説得させる普遍的な感情みたいなものがあると思うんだ。それに、どんなものでも、僕らがもうよく知っているような一つのアイディアから取ったもので、少しでも新しい物のように見えるもの。それはミラクルみたいなものだよ。ポップでも、ブルースでも。構成はもう僕らは知っているけれど、それがうまく行くときって、まるで全てが新しいもののように見えるもんなんだよね。愛してるとか、何でもいいんだけれど、ほんの少し新しい言い方で表現をしている時、いつもいいなと思うんだ」

imge_004後藤「僕は、なんか、やっぱり、今の時代でしか書けないものを書けるかどうかっていうことを考えるんだよね。それは、曲もそうなんですけれどね。結局、例えば、オアシスなんかこのアルバムすごいと思うし、ティーンエージ・ファンクラブも、レディオヘッドも、もっとさかのぼって、ザ・フーもニルヴァーナもビートルズも全部すごいんだけど、多分、今はインターネットが普及して、全部、真っ平らに、ライブラリーが引き出せる時代だから、昔の音楽も若い子たちは同時に聴いていて、そういうものとも勝負していかないと、今は新しいものも、聴いてもらえない時代になっているわけでしょ? そういう中で、どうやって、自分たちの独自性を出すかっていったら、というか、そういう昔のものに対して抗うかっていったら、今しかできないことをやるしかない。今しか書けないこと書くっていう。なんか最近は、それが大事な気がするな」

マシュー「うんうん。新作で、経済の衰退に関するリリックを書いていたね。好きだよ。勇気があると思った。そういう意味では、今回僕らがカヴァーしているソフト・パックの『Answer To Yourself』というアルバムも全部いいよ。コーラスで"I'm gonna die before I see my time, I'm gonna die, try anyway"って歌っているけれど、スーパー・ポジティヴィティーなんだよね。僕の場合は、そうだな、音楽なしで、たくさん書くんだ。ただ書いて書いて書くんだ。で、僕がいつも使うことになる言葉は、音楽と同時に出てきた言葉なんだよ。だからオートマティカルな言葉になりがちで。時には、具体的に書くことって難しいんだ。結局使える言葉は、抽象的な感情になってしまうことが多い。でもトピックが増えるのは好きだし、何回か挑戦もしているんだ。選挙をトピックに書いたこともあるよ。難しかったけど、とてもやりがいがあった。だから、誰かが努力しているのを知るのは、励ましになるんだよ」

後半に続く

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