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12月10日 SHIBUYA-AX
only in dreams「Showcase Live」ライブレポート

後藤正文が中心となって、2010年6月に始動したレーベル「only in dreams」は、現在までに国内外のアーティストの約20作品をリリースしている。レーベル・ショウケースとして初めての開催となったこの日は、レーベル所属のthe chef cooks me、岩崎愛、Dr.DOWNERに加えて、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが出演した。

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後藤が、「墓場に1曲だけ持っていけるとしたら、持っていくほど好きな曲」だという、ウィーザーの「only in dreams」が会場に流れる中、トップバッターとして登場したのは、the chef cooks me。シモリョー(vo、key、prog、etc)、佐藤ニーチェ(g)、イイジマタクヤ(ds)のオリジナル・メンバーに、ベース、鍵盤、コーラス、ホーンセクションを迎えて総勢10名がステージへ。シモリョーが鳴らす鈴の音に合わせて会場にハンドクラップが起きる中スタートした「ゴールデン・ターゲット」から、場内は温かい空気に包まれる。徐々に高揚していくメロディ・ライン、演奏するメンバーの笑顔が伝染するようにオーディエンスも笑顔にする「ケセラセラ」。〈生と死と歓喜、嘆き 主役なき僕らのアンサンブル〉というフレーズが心に沁みる「適当な闇」では、声が幾重にも重ねられたコーラスとフックの効いたホーンセクションで会場の熱を上げ、観客からはさらなるハンドクラップが沸く。今年9月に後藤のプロデュースにより3年半ぶりとなるアルバム『回転体』を、「only in dreams」からリリースした彼ら。

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「今年9月4日に“only in dreams”に仲間入りさせていただきました! さっき今日の出演者全員で記念撮影したんですよ。僕らは今まで孤独な感じでバンドをやってきたんで、仲間がいるっていいですね」というシモリョーのMCを挟み、後半戦に突入。テンポをチェンジしながら壮大なアレンジが圧巻な「流転する世界」で勢いを増し、その勢いをもって「song of sick」へ。「song of sick」では、シモリョーが会場を煽りながらステージを降り、オーディエンスに交じりながら熱唱するというシーンも。ラストは、バンドメンバー全員によるコーラスで始まる「まちに」。the chef cooks meのステージは、バンドとオーディエンスの境界線をなくすような音楽性とパフォーマンスで、終始、多幸感に包まれ幕を閉じた。

  • 1. ゴールデン・ターゲット
  • 2. ケセラセラ
  • 3. 適当な闇
  • 4. 流転する世界
  • 5. song of sick
  • 6. まちに
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2番目は、岩崎愛。1曲目の「花束」で、ふくよかで伸びやかな歌声が会場に響くと、オーディンスはその歌声に集中するように、ステージを見つめる。2曲目は、“金のシャチホコの歌”という「どっぴんしゃーらー」。ファンタジーのようでいて、岩崎のメッセージが乗せられた歌詞が、じんわりと胸に沁みていく。続く「涙のダンス」は、場内をセピア色に染め上げるような歌声が印象的だ。曲によって声色を変えるわけではないが、その歌の世界を情感豊かに綴っていく岩崎の歌声は、歌によってセピア色にも太陽のようなオレンジ色にもその場を染めていくようだ。岩崎の奏でるアコーステック・ギターに、ドラム、ペダルスティールが加わったトリオ編成でのプレイは、3人とは思えない奥行きを感じさせるアンサンブルを繰り広げていく。

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「“only in dreams”に入れさせていただいた岩崎愛です。ゴッチさん、ありがとう。ゴッチさんとは、“HINATABOCCO”(震災後に日向秀和を中心にスタート。バンドマンとして音を鳴らすこと、音楽でみんなを元気づけたい、勇気づけたいと始動したプロジェクト)で知り合って。そこで『東京LIFE』を歌ったら、“いいね!”って言ってくれて。“CDを買うよ”と言ってくれたけど、CDがなかったから、“だったらCDを作ろう”と言ってくれて。“ほんまですか? 今の言葉忘れませんよ”という話をして」という、後藤との出会いのエピソードを話し、そのきっかけとなった「東京LIFE」を披露。ラストは、「ALL RIGHT」。岩崎が〈なんとかなるさ大丈夫〉と会場に歌いかけ、オーディエンスからもシンガロングが起きる。岩崎の包容力のある歌声は、会場中の人を包み込むようなエネルギーを放っていた。

  • 1. 花束
  • 2. どっぴんしゃーらー
  • 3. 涙のダンス
  • 4. 東京LIFE
  • 5. ALL RIGHT
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続いて登場したのは、Dr.DOWNER。場内は、ギターの高橋ケイタでお馴染みのピンクや緑のピカピカと光る角カチューシャを着用したオーディエンスが、前方に詰め寄る。今年7月、「only in dreams」から後藤のプロデュースによる2枚目となるアルバム『幻想のマボロシ』をリリースしたDr.DOWNER。アルバムの1曲目を飾る「幻想のマボロシ」から、この日のライブもスタート。

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オープニングからハイテンションなステージを繰り広げる4人。猪股ヨウスケ(vo、g)、高橋ケイタ(g)、星野サトシ(b)は、縦横無尽にステージを動き回る。アルバム同様に、2曲目は「悲しい歌が鳴り響く前に」。イントロでの小石トモアキ(ds)の激しいドラミングに呼応するように、オーディエンスが激しく揺れる。猪股が「この曲、歌詞がわかんないんだよね。踊れればいいじゃん」と奏でられたのは「刹那のガール」。続く「レインボー」で、会場の熱をどんどん上げていく。『幻想のマボロシ』を携えたツアーを、12月6日に終わらせたばかりだけあって、猪股のボーカルはこれまで以上にエモーショナルに響き、4人が奏でる渾然一体となったサウンドはエネルギーの塊のように燃えていた。

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「俺達も孤独な活動が多かったんで、こういうファミリーな感じはいいな」と、the chef cooks meのシモリョーと同様の想いを言葉にする猪股。「やるかやらないで言ったら、やるっしょ」と、猪股は頭にタオルを巻き、さらに気合をステージにぶち込み、「ライジング」を熱唱。そこからDr.DOWNERのライブでは、もはやお約束の高橋のギターソロ・タイム。高橋はスピーカーの上に登り、そこからジャンプ! 場内からは大歓声が沸く。「暴走列車」では、高橋がステージを降りてギターを弾きまくる。ラストの「ドクターダウナーのテーマ」で、4人の演奏はキレッキレでクライマックスを迎え、燃え尽きてステージを後にした。

  • 1. 幻想のマボロシ
  • 2. 悲しい歌が鳴り響く前に
  • 3. 刹那のガール
  • 4. レインボー
  • 5. ライジング
  • 6. 暴走列車
  • 7. ドクターダウナーのテーマ
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ラストを飾るのはASIAN KUNG-FU GENERATION。今年、デビュー10周年を迎え、9月にはアニバーサリー・スペシャル・ライブを横浜スタジアムで2日間にわたり行ったアジカン。その日以来、3ヵ月ぶりのライブとあって、オーディエンスの期待感が目に見えるように場内に流れる中、the chef cooks meのシモリョーが鍵盤でサポートに入り、5人体制で、「新世紀のラブソング」からライブをスタート。そして、鍵盤のスペーシーな音色が多用されたダンスミュージック的なセッションから「1980」に突入。後藤の挨拶を挟み、「ソラニン」「君という花」「N.G.S」を立て続けにプレイ。「君という花」では、オーディエンスから待ってましたとばかりの「ラッセー! ラッセー!」コール、久々に演奏された「N.G.S」(横浜スタジアムでは披露されず)では、歓喜の声が鳴り止まない。

「どうもありがとう。ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。アジカンは、“only in dreams”から何もリリースしていませんが、僕以外の3人はスペシャル・ゲストです」と、喜多建介(g,vo)、山田貴洋(b,vo)、伊地知潔(ds)、そしてシモリョーを紹介する後藤。続けて「今日の3つのバンドに共通しているのは何か。それは卑屈さなんですよね。でも、だんだんその感じが減ってきてSexyになってきている。出会ったときの彼らは、誰にも見つけてもらえなくてイジけてて、その雰囲気が出ていて。でも俺、その気持ちがすごくわかって。俺らもデビュー直前までサラリーマンをしていて、同世代のバンドはとっくにCDをリリースして活躍してるのに、なんで俺たちは、誰にも見つけてもらえないんだろう?って思ってたから。だから、そういう奴らが気になるというか。“only in dreams”は、期待の新人とかを見つけてくるんじゃなくて、要は再生工場みたいになっているのね。そうやって、みんなもいい音楽を見つけていってほしい」と、自分たちの過去をも振り返りながら、「only in dreams」というレーベルの在り方を言葉にした。

このMCの後に、奏でられたのは「踵で愛を打ち鳴らせ」。イントロから世界を塗り替えるように、心高鳴るサウンドが会場に満ちあふれる。さらに「今を生きて」で、会場中にポジティブなヴァイブスが流れていく。「俺もポール(マッカートニー・71歳)の歳まで、“消して~!”と歌えるかな」と言うMCの後に披露された「リライト」では、かけている眼鏡も吹き飛ばすエモーショナルなプレイを見せた後藤。「ワールド ワールド ワールド」「新しい世界」で、本編を終了。10周年で横浜スタジアム2日間というバンドにとっての一大イベントを終え到達したであろう高み、10年を経てバンドが今、充実の時を迎えていると実感させるステージングは、新しい世界=新たなステージに突入した清々しいものだった。

アンコールでは、横浜スタジアムのために書かれた1曲でもある最新ナンバーの「ローリングストーン」、そして、メンバー4人によるアジカンの好きな楽曲第1位になったという「迷子犬と雨のビート」をthe chef cooks meのホーンセクションの3人を迎えてプレイ。1番手のthe chef cooks meから最後のアンコールまで、多幸感とエネルギーに満ちたこの日の4組のライブは、「only in dreams」の今後に期待をせずにはいられないものとなった。

  • 1. 新世紀のラブソング
  • 2. 1980
  • 3. ソラニン
  • 4. 君という花
  • 5. N.G.S
  • 6. 踵で愛を打ち鳴らせ
  • 7. 今を生きて
  • 8. リライト
  • 9. ワールド ワールド ワールド
  • 10. 新しい世界
  • EC1. ローリングストーン
  • EC2. 迷子犬と雨のビート

Photo by 岸田哲平