INTERVIEW
2020年ベストアルバム
2020年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。
佐野 史紀 (SOFTTOUCH)
音楽が、どこへ行くのか。作り手としてよく考えていました。
誰もが何処でもいつでも様々な音楽に触れることができるようになり、情報流通が平坦化する中で、国内外の音楽は、商業・広告性といった産業面が注目される傾向も飽和しつつある状況。
勿論、いまもその文脈は存在しますが、様々な音楽を探し・見つけ出すというより、暮らしの中で出会えた音楽を応援したいという感情が強く湧き立ちました。それも作用してか、国内寄りの音楽へ耳を傾ける機会が増えたと感じています。それは孤立化と言われ揶揄されることもありますが、むしろ、今日においてはそこに日本の「一般性」を見出すことが出来るのではと思っています。
世相的な背景として、00’s以前の国内の音楽やものづくりは、技術・表現において、海外の模倣をも取り入れて発展してきました。その過程に地域性(東京や関西・めんたい等)や世代(Zや団塊など)といった要素が取り入れられ、人々の心に残るような独自性が花開きました。しかし、情報流通が平坦化した世の中では、先の模倣は、これまで以上にマニアックで、より専門的な音楽性となりえます。そのためごく一部の人のみに届く。地域や世代性に関しても平坦化されることにより境界線や共通性が消失していったように思います。このような世の中における「一般性を持った音楽」とはどのようなものか?と言うことを考えしまうのです。
一般性とは幅広い人々に通ずるという考え方。
スタイルや風習において個性を追求する音楽文化に「一般性」を求める現象が起きていることが、とても興味深く思います。
それを僕は、
「音に個性があるのではなく、聞く人に個性がある」が故に、
「作り手ではなく、聞く人の価値観から作られる作品」であるからこそ、
今を映し出し、海を越え響く「一般性を持った音楽」なのではないかと思います。
平行して、聞く人を取り巻く複雑な社会関係を解きほぐすような考えの中に、「利他」または「公共」的な他者への配慮を見出すことも、人々に通じる一般であり「普遍」なのだと僕は思っています。
唐突な「倫理」ガタリに、少し驚いているあなたや、皆さんへ是非、共有させて欲しい音楽。
こんな時世だからこそ、今年リリースされた素晴らしい作品を選んでみました。
聞いていただけると嬉しいです。
本年もありがとうございました。
佐野 史紀(SOFTTOUCH)
BIO
1976年生まれ、SOFTTOUCHとBEDTOWNのボーカルとギターを担当。
2018年9月にソフトタッチ10年ぶりのアルバム「リビルド」2019年10月にシングル「自由意志」をリリース。
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