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(2020.12.29)

2020年ベストアルバム

2020年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。

2020年ベストアルバム

君島 大空 (シンガーソングライター)

「Compratidas」 - Asi

何かが透き通っていることを認めるとき。透明なものはいつも強すぎるので、自分の中の濁りや皮膜のようなものでフィルターをかけて少し阻む嫌いがあるのですが、Asiの音楽を初めて再生した時、一曲目の一音目でその感覚の外皮が弾けてしまいました。人間が作り出すものがこんなに豊かな水分を讃えていること。光を伴って新しい入射角を与えてくれること。音楽があることが嬉しくて声を出して笑ってしまいました。

「Mutable Set」 - Blake Mills

Vanishing Twinが3月末にシングルカットされてからずっと聴いています。丁度世界がいい知れぬ無機質さに包まれ始めた時期。無意識に求めていた静謐さをこの複雑で丁寧な音像に感じて震えていました。最近改めて聴き返して、アップデートというのは壁を白く塗り直すことではなく新しく立体を創造することなのかもしれない、と思いました。この音楽は新しい建物のようで、でもその土地、国にある風土をしっかりと抱きしめている、歴史の上に立っている。そんな強度を感じずにはいられません。

「Gia Margaret」 - Mia Gargaret

久しぶりにジャケ買いをしたアルバムです。病によってうまく声が出せなくなってしまったGia Margaret(現在は快方へ向かっているようです)名前の頭のイニシャルを入れ替えたタイトルの2nd album。
この盤で彼女の存在を知りましたが、声の不在は歌の不在ではない、と強く思い、あとから1st albumを聴いて更にこのアルバムが好きになりました。電子音と細やかなアコーステックギター、声のサンプリングによって構築されていて、最後の曲をのぞいて全編通して所謂歌はないのですが、電子音楽、アンビエントと呼ばれる音楽の中にも、これはこの人の歌なのだろうと感じるものがあります。言葉の切れ目の続きに伸びていく景色や、その躊躇いの間に生まれるブレスの為の余白、それらを思慮、そのもののような音響構築や処理をすることによって、、でもそれらはきっと日記をつけるような静けさの中で起きて、日々の中でとても自然に彼女は歌をみつけたのだろうと思いました。水中から水面に浮上していくような細やかな光に満ち満ちた作品だと思います。大好きです。

「潜在的MISTY」 - a子

湿度の高いジャケットに惹かれて聴き始めました。とても格好いい。教えたくないくらい。 繊細でいて暴力的な、片っ端から飲み込んでいくような音の渦の中で、声が何よりも重く静かで情報量を持っている状態。ずっと聴きたかったんだよこれを、と高揚しました。息を吸うときのリップノイズが本物の硝子のようでにやにやしてしまう。控えめに鳴るギターのフレーズがどれも非常に素敵。ファンです。

「Vesper」 - Kim Myhr, Australian Art Orchestra

コメント:今年知ったギタリスト。ノルウェーのHUBROという主に即興やアヴァンジャズをリリースしているレーベルを漁っていた時に出会いました。僕はポップさと実験性というものはとても近似しているふたつだと思っているのですが、彼はギターという楽器を中心に置いて、見事にそのあわいに在る景色を具現化しているなと思います。様々な音楽の要素をひとつひとつ大切にほどき、そしてそれらをシームレスに紐付けながらチェンバーなフィールドに落とし込んでいる。和声感や曲の構築力、全体の音響の捉え方にとても広い視点があり、詩性がある音楽家でないとできない仕事だと思います。今一番好きなギタリストです。

君島 大空(シンガーソングライター)

君島 大空

WEB
HP
https://ohzorafeedback.wixsite.com/hainosokomade
SoundCloud
https://soundcloud.com/ohzorakimishima

BIO
1995年生まれ 日本の音楽家。
2014年から活動を始める。
同年からSoundCloudに自身で作詞/作曲/編曲/演奏/歌唱をし
多重録音で制作した音源の公開を始める。
2019年 3月13日 1st Ep 『午後の反射光』を発表。
4月には初の合奏形態でのライブを敢行。
2019年 7月5日 1st Single 『散瞳/花曇』を発表。
2019年 7月27日 FUJI ROCK FESTIVAL "19 ROOKIE A GO-GOに合奏形態で出演。
同年11月には合奏形態で初のツアーを敢行。
2020年1月 Eテレ NHKドキュメンタリー「no art, no life」の主題曲に起用。
2020年7月24日 2nd single 『火傷に雨』を発表。
2020年 11月11日 2nd Ep『縫層』を発表。

ギタリストとして 高井息吹、坂口喜咲、婦人倶楽部、吉澤嘉代子、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、劇伴、楽曲提供など様々な分野で活動中。

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