oid_logo

HOME » INTERVIEW » 2016年 ベストアルバム » 古渓一道(フォトグラファー)

icon_h2 INTERVIEW

(2017.1.9)

2016年ベストアルバム

2016年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。

古渓一道(フォトグラファー)が選ぶ2016年 ベストアルバム

jk_coloringbook
Coloring Book
Chance The Rapper
99.9%
99.9%
Kaytranada
My Woman
My Woman
Angel Olsen
スケルトン・ツリー
Skelton Tree
Nick Cave & The Bad Seeds
Farewell, Starlite!
Farewell, Starlite!
Francis and the Lights
パラダイス
Paradise
White Lung
Teens of Denial
Teens of Denial
Car Seat Headrest
MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)
MALIBU
Anderson .Paak
マン・アバウト・タウン
Man About Town
Mayer Hawthorne

Chance The Rapper / Coloring Book
2016年ベストというよりフェイヴァリットと言った方がしっくり来るこの10枚、順不同ですが、あえて1位を挙げるとしたらこのアルバムになります。この作品と本人が醸し出してるフィーリングがとにかく好きです。去年のベストソング&MVでもあった「Sunday Candy」の雰囲気を引き継いだような5曲目のタイトル「Blessings」(最後のトラックの名前も同じ)がこのアルバムを表すのにふさわしい言葉かも。この作品に参加しているアーティストたち自身の音源もどれも良くて(特にNoname)、そういった意味でも色んな方向への導き役にもなった一枚でした。

Kaytranada / 99.9%
2016年のベストMVのひとつに挙げたい「Lite Spots」を偶然目にして一目惚れ一聴惚れして手に取った一枚です。Chance The Rapperのリミックスなども行っているプロデューサーで、様々なジャンルのブレンド具合が絶妙で、ビートが本当に多彩。仕事の作業中によく聴いてました。この作品やChanceのアルバムはミックステープという文化を改めて意識させてくれたものでもあります。

Angel Olsen / My Woman
10枚に入れるかどうしようか最後まで悩んだのがMitsukiの『Puberty 2』とPJ Harveyの『The Hope Six Demolition Project』。今年はそのMitsukiやPJ、Weyes Blood、Jenny Hvalなどの女性SSWのアルバムにも良い作品がたくさんあったんですが、中でも繰り返し聞いたのがこのアルバム。特にB面が好きです。大好きなWIlcoにも通じる感覚もあって、M7「Sisiter」などはWilco(というかNels Cline)をバックにライヴで聴けたら極上だろうな…などと夢想してしまうことも。

Nick Cave & The Bad Seeds / Skelton Tree
2016年はDavid BowieやPrinceといった、写真を撮ってみたかったけど撮れなかった大物が相次いで亡くなったという年でもありました。その曲のメロディを腕に刻んでる身としてはLeonard Cohen逝去というニュースにもかなりズシンと来たんですが、その遺伝子を受け継いでいる(と勝手に思っている)Nick Cave、昨年に息子を亡くしたということもあってかとてもダークで重いアルバムですが、最後の2曲の美しさには何度も心奪われました。

Francis and The Lights / Farewell, Starlite!
Bon IverやKanye Westが参加してる曲でその存在を知ったんですが、その両名のアルバムよりもたくさん聴いた一枚でした。1曲目の「See Her Out」のエレクトロニックなイントロはBon Iverの「Perth」と同じくらい崇高に感じました。大袈裟かもしれませんが。フィジカル・リリースがないのでレコードで出して欲しい。MVで見せる彼自身のシアトリカルな雰囲気も好きです。

Whitney / Light Upon The Lake
ある作品を好きになる理由には色々とあって、自分が「いい!」と思ったものに対して、自分が好きな・信頼している人が「いい!」と反応してくれたりすると、そのアルバムのお気に入り度が断然増したりすることがあります。Whitneyはその最たる例。never young beachの2ndも前作同様すごく良かったんですが、それと共振もしてる感覚がありました。

White Lung / Paradise
速いテンポの曲ばっかりでハイが強めなモダンなプロダクションの音だけど、何故か何度も何度も繰り返して聴いたアルバムでした。M3の「Below」がとにかくエモーショナル。Holeの『Live Through This』(大名盤)を思い出すほど。トータル30分にも満たないアルバムってことも◎。

Car Seat Headrest / Teens of Denial
Cloud Nothingsで若きBeckが歌っているような冒頭曲からしてもう最高です。ナード感大学生感もある本人の佇まいも合わせて、好きのツボを何箇所も押されたアルバムです。オルタナの薫りがするって点では、PinegroveやJoyce Manor、PUP、Beach Slangといったバンドたちのアルバムも好きでした。隣のWhite Lungもそうなんですが、そういう時代じゃないとはわかっていてもなんだかんだ言って歪んだギターがガンガン鳴ってるロック・バンド(Car Seat Headrestはソロだけど)には毎年期待してるんです。ノスタルジックではない意味や手法で新しい音を鳴らしてるバンドをずっと探し続けています。

Anderson .Paak / Malibu
(feat. Anderson .Paak)というクレジットがある作品はほぼ間違いないものばかりだった印象もあった2016年(上にあるChanceやKaytranadaの作品にも参加)。名客演アーティストの代表格でもあった彼の、自身のアルバムもとても素晴らしかった。もともとドラマーだったこともあってか、リズムがオーガニックで気持ちよい曲が多いです。

Mayor Hawthorne / Man About Town
こういう、ブルー・アイド・ソウルのリッチでエロくて粋な伊達男のムードを上手く出せてる人って少ないよなあと思いながら聴きました。サマソニでのライヴもとっても良かった。Hall&Oatesの全盛期を思い出すなあ…と思ってたらThe xxが新曲でそのHall&Oatesをサンプリング。The xxの新作は来年初頭の大注目作になるはず…ということもあって、2017年にも繋がるレコードということで。

以上の文中にも、10枚から泣く泣く外したアーティストの名前をそこかしこに書き込みましたが、他にもANOHNI、A Tribe Called Quest、The Lemon Twigs、Radiohead、サニーデイ・サービス、Lambchop 、吉田省念、Frank Ocean、METAFIVE…といったものをよく聴きました。

ベスト・ライヴは、Grimes(1/26 赤坂Blitz)、Tame Impala(4/25 Zepp Tokyo)、BUMP OF CHICKEN(7/17 日産スタジアム)、Wilco 7/23(Fuji Rock Fes)、Ben Watt(9/13 渋谷WWW X)、The xx(12/6 豊洲PIT)、Alabama Shakes(12/12 新木場Studio Coast)。

ベストMV&ソングは、上にも挙げたKaytranadaの「Lite Spots」と、何故か海外では評判よくないけど(TIME誌はワーストに選んでた)、Justin Timberlakeの「Can’t Stop The Feeling!」。不恰好だろうがなんだろうが、みんな自由に踊って楽しめばいいのだ。

Kaytranada「Lite Spots」

Justin Timberlake「Can’t Stop The Feeling!」

2016年は、個人的な面では人生初入院したり過去最低なくらい仕事がうまくいかなかったりしていて、社会的な面でも世界中で驚くようなことばかり(良くない意味で)起きてて不安に包まれてしまった一年でした。でも、音楽好きはみんなそう実感してると思いますが、リスナーとしてはもの凄くワクワクしっぱなしな年でもありました。だからこの10枚を選ぶのも例年以上に悩みました。今年は「あのアーティストの新作が出る! あのバンドのもあの人のも?!」という興奮がずっと続いていた印象です。ただ去年のリストを見ても思ったんですが、自分は新鮮な発見をするのが好き・新しもの好きなんだなということを再確認しました。とにかく良い作品が多すぎて、普通だったらここに名前が出てくるアーティストでも漏れてしまったという感じです。
来年もきっと新しい音楽はどんどん生まれてくるだろうし、きっと貪欲にそれを探し続けると思います。世の中では分断が進んでいく中で、いい音楽はどんどん交わっていっている。曲がりなりにもメディアの中にいる人間として、それを少しでもいろんな人たちに伝えていければいいなと思っています。とりあえず、上の10枚に挙げたアーティストは誰も撮ったことがないので、ぜひ撮影の機会を持ちたいというのが来年の願い&目標です。

古渓一道(フォトグラファー)

image_kokei

WEB
http://kazumichikokei.tumblr.com/

BIO
主にミュージシャンのライヴやポートレートを撮っているフォトグラファーをやっています。
音楽と同じくらいフットボールも大好きです。
2017年初頭にミニ写真展を開催予定。
https://twitter.com/k_kokei http://twilog.org/k_kokei https://www.instagram.com/k_kokei/

▲ページTOPへ戻る