Dr.DOWNER ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

HOME » INTERVIEW » Dr.DOWNER ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

INTERVIEW

(2011.07.07)

Dr.DOWNER ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

――後藤さんは猪股さんの歌詞のどのへんが面白いと思います?

後藤｢『明日、晴れればいい』が素晴らしいと思う。なけなしの感じがね。それでも希望があるっていう｣

猪股｢ふふふふふ｣

ケイタ｢ただ、スタジオで歌詞を渡される時、呆然とする時がありますよ。仮歌の曲がある時に、突然歌詞を作って持ってくるんですけど、"この歌詞気に入ってるんだけど"って渡されて、パっと見たら『パンクロック音頭』って｣

猪股｢歌詞はできたらみんなに渡すんですよ。歌わない人にも｣

――それは意見を求めて渡すわけでは......。

猪股｢ない｣

ケイタ｢一応見るだけ｣

後藤｢俺、ここ好き。『フラストレーションシティ』の、《"こんなはずじゃなかった"って/どんなはずかは知らねえよ/すれ違った運命に絶望しとけよ》って｣

猪股｢それ、昔の悲しい時代の歌詞だね｣

後藤｢"絶望しとけよ"っていいよね。"絶望"ってギターロックのクリシェだけど、そういうのも勝手にやっとけっていう感じがいいよね。そんなことより切実なことがあるっていうアティテュードなわけでしょ。日常とか｣

猪股｢そうだね｣

後藤｢ヤケクソのようでいてヤケクソじゃないし、ちゃんと今を信じてるヤツの歌詞だよね、俺が思うには。ぶっきらぼうな言葉に見えるけど｣

猪股｢やんないといけないことがあるしね。まず家賃を払わないといけないし｣

後藤｢そういう家賃の話とかがリアルでいいんだよ｣

猪股｢歌詞を書く時も、フィクションみたいなことは、俺が歌ったって意味ねぇなって思っていて。もしそういうことを書くなら人に歌わせます｣

後藤｢誰も歌いてえって言わねえよ｣

猪股｢ふふふふ｣

ケイタ｢後藤さんどうっすか?｣

後藤｢いやだよ。あと、俺がひとつだけ注文付けたいのは、他の曲のタイトルを別の曲の歌詞で歌ったりするのはやめろっていう｣

ケイタ｢『パンクロック音頭』と『ユーウツ祭りスタイル』ですよね｣

――何でそういうことをしちゃうんですかね?

猪股｢たいして考えてないです。『パンクロック音頭』って曲名はつけたかったけど、そのタイトルを『ユーウツ祭りスタイル』につけるかどうかで悩んで｣

後藤｢そこだろ! その悩みだろ! 『ユーウツ祭りスタイル』で"パンクロックはいつ～も～"って歌ってるんだから、曲名は『パンクロック音頭』じゃねぇのかよって思うでしょ｣

猪股｢でも、『パンクロック音頭』は、"パンクロックはオレの現実までは救えない"って歌っていて｣

後藤｢音頭っぽくないんだよね｣

猪股｢そうそう。パンクロックに対する皮肉みたいな感じ。パンクロックは好きだけど、生活は救えないぜって。だからパンクロックに対する曲だ、『パンクロック音頭』だって｣

後藤｢ただ、曲名覚えられないんだよな｣

ケイタ｢レコーディング中も、『パンクロック音頭』はさぁ、って言ってるけど、それ『ユーウツ祭りスタイル』のことだよな、後藤さん間違ってるなって思ったこともある｣

後藤｢あと、"現実、いつも、フラストレーション"って歌ってるけど、『フラストレーションシティー』は別の曲っていう｣

ケイタ｢それは『バビロンタウン』ですね｣

猪股｢そんなわかりづらいですかね｣

――でも、変えないんですよね?

猪股｢うん。歌詞を書いてる人間が違うわけじゃないし、曲によってテーマが違うわけでもないし。タイトルは、他にないヤツがいいんですよ、俺は｣

――ただ、アルバム・タイトルは『ライジング』っていうシンプルな曲名からとったものですよね。

後藤｢アルバム・タイトルを俺が却下しまくったっていうのはあるけどね。いろんなタイトルを混ぜたような感じのヤツ｣

ケイタ｢今まではそうだったんですよ。曲の一部分一部分の単語を繋げていて。だから今回シンプルでびっくりしました｣

猪股｢最初は俺もそういう案を出したんだけど、覚えづらいから却下ってなって、一番俺が好きな曲の曲名でいいかなって｣

後藤｢"待ちぼうけ何とかタウン何とか"とかあったよね。でも、覚えられないし意味がわかんないし、どんどんネガティヴな感じになっていって。そんな街に行きたくねぇし。はは。こういう時期でもあるし、バスッとカッコいいタイトルがいいですよね｣

――あとはこれを広めていくだけですね。

猪股｢やれることは全部やろうと思います｣

後藤｢あとは自分たちがどうするかだし。いいものはできたと思いますので。震災後の混沌の中でレコーディングして、できることをやった、当時のベストだと思います。それからライブをやってるから、今やればもっといいものができるけど、そんなもんでしょ音源って。あの時にしかできないものでもあるし。みずみずしい感動に溢れてたっていうか｣

猪股｢感動したのはね、同じドラムセットでも、小石と潔さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)で全然音が違うっていう｣

後藤｢それ、プラス材料じゃないよ｣